しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

2019-01-01から1年間の記事一覧

書くことの格率

じぶんが時代にほとんどついて行けていない、という感触がある。 ここでの「ついて行けていない」というのは、最新のニュースがわからないとか、先端的な流行が理解できないとか、目新しい考え方に慣れないといったことではない。おそらくそうした流行にぴり…

為してないことばを使わない

さいきんの書くことの格率。実際に為していない行為のことばを使わないこと。たとえば「紡ぐ」ということばがある。しばしば「ことばを紡ぐ」「物語を紡ぐ」といった表現が使われる。しかしわたしは本当に糸を紡いだことがない。つまり、カイコの繭や、木綿…

時代とちょこまか

時が経ち、時代が移り変わってゆくという感覚がいまひとつ自分の中に無いような気がする。たとえば、昭和初期の都市や田舎の風景を撮影したフィルムの映像を、テレビやネットで見ることがある。白黒の焦げたような陰影のなかを、当時の人々がちょこまか動き…

神戸と霧

科研提出したメンバーでアメリカに調査に行くぜ!という流れになる。具体的な旅程の相談が始まってから、パスポートが切れているのに気づく。 仕事が最近立て込んでいた。それがいったん区切りとなり、今日は午前中振替休日にしていた。充電のため。その休み…

公務員の肩書がわからない

いまの職場は公務員のひとたちと接する機会が非常に多い。名刺もいただく。名刺にはいろいろと肩書が書いてある。その肩書の意味が、なかなかわからない。 審議官と参事官では、審議官の方がエライのか、参事官の方がエライのか。エライエラクナイのヒエラル…

目分量の生活

洗濯は朝と決めている。乾燥もしてくれるので洗濯ものを放り込んでスイッチを入れるだけなのだが、洗剤は自分で毎回投入しなければならない。「0.3」とか「0.5」とか、洗濯機が洗剤の量を教えてくれる。 ところがどうも自分はその指示に従っておらず、なみな…

伊藤野枝と電車内の記述 その2 大正時代の痴漢

『伊藤野枝集』を読んでいたら、もう一箇所、電車内についての記述が出てきたので書き抜いておく。 私はよくこみ合う電車の中などで、こみ合うのをいい幸にして、わざと身体をすりよせて来たりする不都合者に時々出遭います。そんな場合には、どうも表立って…

伊藤野枝『乞食の名誉』における電車内の記述

少し前、電車でどこかに「行く」という表現は奇妙だと書いた。そのとき、夏目漱石の小説『坑夫』に、歩いていた主人公が途中で汽車に乗るシーンが出てくるということを、記憶のまま書いた。 その後、電車の車内の書き方ということに少し関心を持っていた。 …

研究用個人データベースを自作する

研究は資料を溜め込んでは編みなおす作業である。溜め込んで忘れてしまっては厚みのある研究はできない。そこでデータベースに類するものが必要になる。しかし決定版の既製品というものは無い。そこで自分でデータベースを自分で作ってみようとおもう。 1.…

役に立ちたい、の危うさ

現在の職場に研究員として就職してから、2回、災害対応の現地派遣に参加した。 1度目は工場の重油流出があった佐賀県、2度目は今回の台風19号の被災地。 現地派遣に実際に組み込まれて、ほんとうにいろいろなことを考えた。 ここまで真剣にものを考えたの…

被災地から出るときの

先週、3日間、台風19号の被災地に入っていた。被災地という言い方にはいろいろと抵抗を感じるのだけれど、ともかく被災地と呼ぶほかない。そこから神戸に帰ったとき、自分のこころが独特の刺々しさを帯びていることに気づいた。ささくれているというか、誰か…

「遠いい」

さいきん、関西圏で、「遠い」と言うとき「トオイイ」と語尾のイを重ねて発音する例をたまに聞く。若い人に多い気がする。ある地域で昔から言われていた方言の一種でありそれが広がっているのか、それとも最近になって発生した新しい言い方なのか知らない。…

「逃げ遅れたのか、取り残されたのか、逃げる途中だったのか。」

3月11日は沿岸部に大きな被害がありましたが、4月7日の余震で、内陸にも被害がありました。私の自宅では、台所の食器棚が全部倒れました。私は寝室にいて、立っていられる四つん這いになって逃げたのですが、そのあとに寝室のタンスが倒れ、下敷きにならずに…

これ以上かっこいい名前の研究室は無さそう

かっこよすぎでしょう?

初等教育で「トロッコ問題」を使うことの是非

小中学校で「トロッコ問題」を題材に授業することがあるとチラホラ読むことがあって、うーんそれは…と思っていた。個人的な意見だが、初頭教育で「トロッコ問題」を使うのは、相当の覚悟が無いかぎり、やめたほうが良いのではないかと考えている。 以下のよ…

組体操というより雑技団

組体操の継続をめぐって神戸市長と同市教委が「大バトル」という記事。骨折事故が起きてるから止めろという市長と、継続という教委の構図。 事故例のイラストを見てすごく驚いた。というのも、わたしが中学生の時にはまずやらなかったような「技」だから。 …

コメリの災害対策センター広報誌がおもしろい

ホームセンター「コメリ」の「災害対策センター」が年2回広報誌を発行しているのだが、この内容がおもしろい。 http://www.komeri-npo.org/about/history/other/2019/support_1901.html No.23の特集は「滋賀県インタビュー 国内で26年ぶり豚コレラ」。 昨年9…

『風の谷のナウシカ』が長期連載化したら

大海嘯・オーマ編(1-7巻) クシャナのトルメキア再興編(8-13巻) チクク修行編(14-16巻) アスベル流浪編(17巻) 蟲使い13支族最強戦士トーナメント編(18-25巻) ラピュタ島封印編(26-29巻) クロトワ覚醒編(27-30巻) チヤルカ料理対決編(31-45巻) アスベルの息子…

奄美へ行った

大学院時代に旅行記を2回書いている。 Trip to Toronto(2期生高原さんの独占ルポ) | 大阪大学 未来共生イノベーター博士課程プログラム From: T(2期生「海外インターンシップ」@タイ) | 大阪大学 未来共生イノベーター博士課程プログラム その後も小さ…

石を投げる・投げられる: ズンズンギィー雑考

メモとして: 上のまとめがあって、それを受けて下のまとめができたという流れ。 2つ続けて読むと、複雑な気持ちになる。 多くのひとは、石を投げる。石をぶつける相手を探している。誰に石を投げるか・投げないかを決めるのはまさしく自分だとおもっている…

連れてゆかれる

高速神戸駅から十三駅まで車内でうとうととしていた。電車に乗るというのは不思議な体験であるとおもう。それは「連れてゆかれる」という体験である。 わたしたちは日常、列車に乗ってA駅からZ駅まで〈行く〉と言う。けれども列車の車内で何か〈行く〉ことの…

米原幻想

「京都方面・米原行き」という新快速を見ると、米原という見知らぬ地名のことが気になる。子供のころからそうだった。いつからか、終点駅米原のイメージがわたしの中に少しずつかたちづくられていた。 米原はどこにあるのだろう。すくなくとも京都のもっと向…

海底古細菌とウイルス

先日、東北のある場所でひとりで原稿を書いていたとき、品の良い初老の女性と、小学校低学年らしき男の子が隣席に座った。二人は祖母と孫らしかった。なんとなく会話を聞いていると、男の子がたいそう聡明であることが自然と伝わってきた。賢しらなことを言…

東北へのチューン

先週、個人的な旅行で宮城県を歩き回って、きょうまた学会で仙台に来ている。きょうの仙台は関西に比べるとかなり涼しい。帰りたくない。先週の旅行と今日の学会ではっきりと自覚したことがある。それは、東北の「被災地」に対して自分のアンテナの周波数の…

公共的芸術活動のための事前チェックシート

展示内容および企画の意図が、 日本国民の心を踏みにじっていない ☑はい □いいえ 正しい歴史観に基づいている ☑はい □いいえ 捏造された過去の歴史を蒸し返さず、未来志向である ☑はい □いいえ 政権与党の政策や立場を「理解」している ☑はい □いいえ 国民の…

特別な皮

世の中には膨大なる種類の皮がある。 皮は剥いたり、めくれたり、はがれたり、余ったり、傷ついたりする。 他の言語ではわからないけれど、日本語の「かわ」はすべての「かわ」を意味していて、その範囲は広い。桃の皮も大根の皮もスイカの皮も皮である。動…

絶句

昼間、このエントリを拝読して言葉を失った。 自分自身が授業料減免制度を利用してきたし、後輩たちもおそらく利用しているからだ。 じぶんは大阪大学で院生をしていた5年間、前期課程2年間と後期課程1年目は半額免除、後期課程の2-3年目は全額免除していた…

伊勢湾台風記録映画を観なおしてみる

現代の視点から見ていると、いろいろな発見があっておもしろい。 いくつか挙げてみる。 服もけっこうラフ 名古屋市災害対策本部の記者会見の様子。ロウソクが使われている。 遺体安置所の様子。安置所というか、露天にそのまま並べられている。生存者が家族…

防空と防災

古い国会議事録をネットで漁っていたら面白い表現が出てきたのでメモしておく。 ○林田正治君 只今上程になりました特別都市計畫法案委員會の審議の經過竝に結果に付て御報告申上げます、尚ほ其の詳細は速記録に讓ることに致したいと存じます、本案の委員會は…

三宮の事故のことを思い出す

京都の放火事件の翌日、鳥取に出張に行った。行きの列車が予定より遅れたりして、同僚とわちゃわちゃしながら行った。楽しかった。そうして帰りの「スーパーはくと」の車内で、放火事件のことをすこしだけいろいろ考えていた。そのスタジオの作品はほとんど…