しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

米原幻想

「京都方面・米原行き」という新快速を見ると、米原という見知らぬ地名のことが気になる。子供のころからそうだった。いつからか、終点駅米原のイメージがわたしの中に少しずつかたちづくられていた。

米原はどこにあるのだろう。すくなくとも京都のもっと向こう、ずっとずっと遠くにある。おそらく北陸の奥、富山とか新潟とか石川とか津軽海峡とか、なんかあそこらへんの、日本海側の都市なのだろう。関西から遠く離れているけれど、うらびれた街というのではない。そこにはほとんどの関西人が知らぬ繁栄がある。

思い浮かべると現れるのは夜の都市だ。北の星座に見守られた広大な操車場。深夜、新快速列車たちがそこでモーターをしばし休める。そして終端駅には港が不可欠である。ライト瞬く貨物港で税関職員が双眼鏡を机に置く。港湾労働者たちの白い息に霧笛が重なる。たしかに米原は神戸や大阪とつながっている。しかし一生の間にそこを訪れることができるのは幸運な旅人だけである。はるかなる静寂の港町・米原……。

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いや米原おまえ、滋賀県やったんか。(今朝知りました)