しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

2020-01-01から1年間の記事一覧

首都さえ占領すれば戦争は終わる

中林啓修先生が、新型コロナへの対応を「決戦」としてイメージしてはならない、持久戦・遅滞戦である、と春先に断言しておられた。 決戦とは両軍の主力が真正面からぶつかって雌雄を「決する」戦いである。決戦の結果、敗軍は壊走して首都ががら空きになり、…

同期が本を出しました(宮前良平『復興のための記憶論』大阪大学出版会、2021)

大学院時代の同期(研究科も研究室も違いますが)が博論を出版しました。 岩手県野田村での津波被災写真の返却会をずっと追ってきた若手研究者の最初の一冊です。 年明け1月8日発刊で、絶賛予約中です。ぜひお買い求めのうえ、感想・ご批評を著者までお届…

望ましき崩壊

実のところ、この国のひとびとは医療崩壊ないしは感染症拡大による大量死を心の奥底でかすかに望んでいるのかもしれない。それは個人の生死で帰結する個人的破滅願望とは異なる、根本的にどうしようもなく無責任な集合的破滅願望である。文明や社会なるもの…

「レトリーバーライフ」動画からレトリーバーを弁護する

実家でラブラドール・レトリーバーを飼っており、レトリーバーの動画が上がっているとついつい見てしまう。ところで「レトリーバーライフ」という特化サイトがある。そのなかに、内外のレトリーバーの動画を紹介して動画内容に解釈を付け加えるというコンテ…

論文が公開されました

災害復興学会に投稿していた論文が公開されました。 査読無しではありますが、自分で書きたいものを書いたという実感がある論文です。 お気に入りの一本です。 高原耕平、山村紀香「オルタナティブ遺構論 小さな遺構と出来事への近づき方」、日本災害復興学…

仕事をする

仕事が雑になってきているな、と感じる。 「なんであれ丁寧な仕事をする」というのが自分のポリシーだと思っていた。昨年はある程度、自分なりにそれを達成できていた。 いまはかなりダメで、質が落ちていると感じる。〆切も守れていない。 いま考えてみると…

先生達が忙しいらしいから

学部1回生のとき、夏休みが9月いっぱいまであってこれはさすがに長いなと思った。有効活用しようという計画もなく、ぼんやりと過ごしていたのだとおもう。 10月1日から後期の授業再開だと思っていたら、工学部の授業はまだ始まらないらしいとクラスメイトが…

共著論文が地域安全学会の論文奨励賞を受賞しました

共著者として参加した地域安全学会の論文が学会の論文奨励賞を受賞しました。 藤原 宏之,佐藤 史弥,松川 杏寧,寅屋敷 哲也,高原耕平,竹之内 健. 「災害マネジメント総括支援員等が執る災害対応プロセスの分析」『地域安全学会論文集』37, pp.327-338, 2…

自分の書いたものにきづく

近日の発表で過去のスライドを1枚くらい再利用しようかなーと思い、昨年の復興学会で自分が発表したときのPPTを見直すといろいろと面白いことを書いていてちょっと驚く。 去年の自分はこんなことを考えていたのか… やるやん… というか発表したんやったらマジ…

安倍(前)政権とは結局なんだったのだろうか

安倍(前)政権とは結局なんだったのだろうか。いまさら自分なりに言語化してみようとおもう。 ことばを大切にしないひと(たち)だな、というのが前政権に対するわたしの評価である。それは言行が一致しないとか、過去の法規や歴史を蔑ろにするとか、答弁が…

鷲尾和彦写真集『Station』夕書房、2020年

オーストリア・ウィーン駅の難民の様子を捉えた写真集。 著者あとがきによると、駅にたまたま滞在した数時間のうちに難民の列車にゆきあい、3時間ほどで撮ったものだという。 撮られたひとびとの表情が多様であることに少し意外の感をもつ。 疲れ切った顔、…

芦名定道先生のこと

大谷大学の学部生だったころ、芦名定道先生の「キリスト教学」の講義を1年間受けた。芦名先生自身は京大のキリスト教学講座の教員で、大谷大学には非常勤講師として来られていた。(京大に入学したわけでもないのに芦名先生の授業を聞けたのは単純に幸運とし…

幻に終わった日本最初のアスファルト舗装

一方、日本で初めてアスファルト舗装が実施された場所はどこでしょうか。それは、明治11年(1878年)に、神田昌平橋で行われた橋面舗装です。実は、この前年に東京上野公園で開幕した第一回内国勧業博覧会の会場で、日本発のアスファルト舗装を試みられてい…

乳母がいて女官は死ぬ

高校のときだったと思うが、国語の古典の授業中にこんなことを先生に言われたのを覚えている。曰く、「女のひとって授乳期間中は月経が止まるのね、だからその間は妊娠しない。でも赤ちゃんを乳母に預けたら授乳しなくなるから月経が再開して、セックスした…

クレー射撃と鳩

Wikipediaを読んでいたら、粘土製の皿を撃つ「クレー射撃」競技はもともと生きた鳩を使っていたと書いてあってちょっと衝撃を受けている。 クレー射撃(クレーしゃげき)とは、散弾銃を用いて、空中などを動くクレーと呼ばれる素焼きの皿を撃ち壊していくス…

逃げないという本能

通勤中山手線でバッグが爆発。。。怖すぎる pic.twitter.com/7EwijyuFsJ — 浦和ちゃん。 (@guchiaka73) 2020年9月16日 一昨日、ツイッターに投稿された動画。 映っている範囲では、乗客が発煙しているバッグから1~2メートルぐらい距離をとって「見守ってい…

講演します

10月15日「震災対策技術展大阪」D会場 グランフロント大阪(北館地下2階) 高原耕平「待ち望む・積み重ねる・くりかえす: 東遊園地から考える技術と災害」 セミナー(会場) | 震災対策技術展 大阪

論文が採択されました

少し以前に投稿していた論文が査読通りました。 大門大朗・宮前良平・高原耕平「集合的トラウマと災害復興に関する理論的検討―カイ・エリクソン『Everything in its Path』を読み返す」日本災害復興学会論文集、次号掲載

歴代内閣の「世襲議員度合い」を数値化する

「世襲議員」という表現にはどことなくネガティブなイメージがつきまとう。他方で、特殊な生育環境ゆえに優れた政治家が育つこともあるのかもしれない。いずれにせよ、国会議員の「世襲」は当たり前のことになった。 しかし具体的にどれくらいの議員が「世襲…

論文が採択されました

査読が通りました。 高原耕平「0歳児が語る阪神・淡路大震災: 震災学習世代の中間記憶と世代責任」地域安全学会論文集, 37, 2020. 次回の学会秋季大会での発表となります。

宮地尚子『トラウマにふれる 心的外傷の身体論的転回』(新刊ご恵投いただきました)

精神科医・医療人類学者の宮地尚子先生より、新刊書『トラウマにふれる』をご恵投いただきました。 ことばからからだへ、からだから性へ、性から社会へ、社会からひとへ、ひとからまた、ことばへ。そのような転回というか、「動き」をずっとたもった本である…

りっぱなことを書きたいわたし

気づくといろんなひとがりっぱなことを書いている。 揶揄や皮肉ではなくて、ほんとうに、いろいろなひとがいろいろなりっぱなことを書いている。 積み重ねられた知見であったり、研ぎ澄まされた問題意識であったり、社会で真に求められていることを正確に認…

トートロジー校則

都立高校の校則。なんでツーブロックはダメなのか。本当に驚愕の答弁。pic.twitter.com/Wj2JhIchEu — 池川友一 都議会議員 (@u1_ikegawa) 2020年7月13日 この答弁は「ルール」の意味を考えるうえで面白いなと思った。 なぜ校則でツーブロックを禁止するのか…

職場が爆破予告を受ける

熊本県・福岡県の水害対応の現地支援に行っていたら、職場が爆破予告を受けていた(正確には、予告を受けたのは職場の隣の建物です) 7月15日(水)の臨時休館について | 人と防災未来センター どうやら爆破は実行されなかったらしく、他所様をお助けに行…

「出勤」という文化は何だったのか

職場では4月から「週4日在宅勤務、1日出勤」の体制が続き、緊急事態宣言が解除された最後の2週間は「週2日在宅勤務、3日出勤」となり、今週から完全に「週5日出勤」に戻った。 在宅勤務の良い面悪い面はいろいろなひとが既に語り尽くしているので今更…

江戸時代の「見試し」

「見試し」という方法があることを知った。現代的にいえば、フィードバックを重視した柔軟なエンジニアリング/プロジェクト管理手法、ということになるだろうか。 直接知ったのは、藤垣裕子氏の『専門知と公共性』という書籍から。少し長くなってしまうが、…

大震法の時代

「大規模地震対策特別措置法」という法律がある。大震法と略される。1978年(昭和53年)に成立した法律で、いわゆる「東海地震」の予知を前提としている。観測網が東海地震の前兆現象を捉え、学識者からなる「判定会」が東海地震の危険が迫っていると確認し…

『家庭科』に1ページ論説を寄稿しました。

全国家庭科教育協会の機関誌『家庭科』令和2年1月号に、「災害に備える」という特集で自分の職場の研究員4名が1ページずつの論説を掲載しています。 河田滋人「防災教育の難しさと可能性」 木作尚子「避難所での生活をイメージしてみる」 高原耕平「災害とは…

宮崎駿と「薄ら寒さ」

宮崎駿の『雑想ノート』を小学5年生ぐらいのとき自分で買って読んだ。その巻末に宮崎へのインタビューが掲載されている。そのなかで、「『安松丸物語』を描いていたとき、どことなく薄ら寒かった」といったことを宮崎が述べている(記憶をもとに引いているの…

Tochka Nisshi

じぶんが思っている以上に、こんかいの感染症拡大は世のひとびとを分断しているのだろう。 すぐに「リモートワーク」に切り替えられる職場のひとと、仕事の性質上それが不可能なひと。 飲食や遊行や旅行を「自粛」で我慢しなきゃと感じるひとと、それらのサ…