しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

防空と防災

古い国会議事録をネットで漁っていたら面白い表現が出てきたのでメモしておく。

 

○林田正治君 只今上程になりました特別都市計畫法案委員會の審議の經過竝に結果に付て御報告申上げます、尚ほ其の詳細は速記録に讓ることに致したいと存じます、本案の委員會は質疑應答を重ねますること六囘、此の間極めて熱心なる質疑が行はれました、今其の主なるものに付て申上げます
 第一は全國に亙り百二十有餘、燒失面積一億六千萬坪に及びまする所の戰災都市の復興は、實に國家百年の大計を樹てることを意味するものであつて、本計畫は先づ國土計畫の線に沿うて樹立されねばならぬ、從來の無計畫的な、單なる横廣がり的な過大人口都市の復興は斷じてやめなければならない、且つ過去の禍ひを轉じて、此の際防空防災に十分意を用ひ、幸福なる文化的な都會を作らねばならぬが、政府の之に對する意見は如何と云ふ所の質問に對しましては、勿論政府は此の質問の趣旨に副うて、國家百年の大計を目途と致して、本年一月政府が定めました所の戰災地復興計畫基本方針に則ると共に、内務省國土局とも十分に連絡を圖り、防空防災にも十二分に意を用ひて、廣幅員の道路及び緑地帶と云ふやうなものを思ひ切つて設けまして、さうして此の計畫を立て、從來の都市の單なる平面的なる所の都會より、立體的な、而も防空防災の上に於て十分意を用ひ、工場、學校等の地方分散をも織り込んで、文化的な住み心地の良い都會の復興に努めると云ふ答辯がありました(昭和21年7月30日、衆院本会議)

 

林田正治衆院議員が、「特別都市計画法」案の委員会審議の経過報告をする場面。

委員会質疑では、戦災で焼失した全国120余りの都市の復興について、「従来の無計画的な、単なる横広がり的な過大人口都市の復興は断じてやめなければならない」という意見が出された。復興は「防空防災に十分意を用い、幸福なる文化的な都会を作らねばならぬ」と言う。これに対する政府の答弁も「内務省国土局とも十分に連絡を図り、防空防災にも十二分に意を用いて、廣幅員の道路及び緑地帯と云うようなものを思い切って設けまして、さうして此の計画を立て、從來の都市の單なる平面的なる所の都会より、立体的な、しかも防空防災の上に於て十分意を用い、工場、学校等の地方分散をも織り込んで、文化的な住み心地の良い都会の復興に努める」というものだった。

太字で現したように、質問でも答弁でも、「防災」に「防空」すなわち空襲被害の低減が併記されている。昭和21年7月末、戦争が終わってまだ1年経っていない。たとえば共産圏からの爆撃機が再度都市を空襲するという想像力がはたらいていたのかもしれない。

その後の世論というか日本語用法では、「防災」と「防空(国防)」はおおむね分離されてゆくように思われる。ここらへんの語感の微妙な遷移が日本の防災対策にも響いているという仮説は立つだろうか。