しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

2019-01-01から1年間の記事一覧

思い出すことなど

「記憶」とは何なのだろうということを、あらためて考えている。 記憶の心理学や脳科学はさまざまに研究されている。それらは「記憶」を完全には解明していないけれど、ある程度のことははっきりとしてきたし、この方面の研究では今後数十年のうちにさらに大…

けっきょく避難勧告・指示とは何なんだろう

今般の豪雨で、しばしば「避難情報を待たずに自分で判断して避難を」というメッセージが発せられた。しかしそうすると、避難勧告や避難指示とは何なのだろう。 避難勧告の発信が高い可能性で予測されている。その勧告は受信者に避難という行為を促す。ところ…

フィールドノーツを書くのはむずかしい

研究会の発表原稿を書いていて、そのために1-2年前のフィールドノーツを読み返している。フィールドノーツとは現場調査で自分が見聞きしたことをまとめたもので、研究の基礎資料となる。その場で起きていたこと、交わした会話、発見したことなどをノート…

おじいちゃんは人を撃ったのか

わたしには母方の「おじいちゃん」が二人いる。祖父と、祖父の兄である。後者の「大きいおじいちゃん」は徴兵されて兵隊に行っていた。そのことを生前に当人に直接聞くことはなかったが、わたしは、おばあちゃん(かれの奥さん)と、母(かれの姪)からよく…

最高瞬間視聴率

「最高瞬間視聴率」というものは、不思議な数字だとおもう。とくに放映の展開が予測できないスポーツの生中継の場合、もっとも劇的なシーンに視聴率が最も高くなるというのは、不思議なことだ。 放映の展開が予測される番組の場合は、ここでは除外する。たと…

座学はきつい

6月、「人と防災未来センター」は研修シーズンに入ります。 危機管理室や防災関連部局で働く自治体職員の方が日本中からセンターに来られ、3~4日間、集中講義形式で災害対応に関する最新の知識やノウハウや事例を習得します。わたしのような1年生研究員…

都道府県のスケール感

いまの職場に入って、自治体職員の方と関わることが少しずつ増えている。 そこで気づいたのが、「都道府県」という組織の圧倒的な巨大さ、スケール感だ。 市町村は基礎自治体である。住民にとって、日々の行政サービスのなかで出会うのは基本的に市町村とい…

避難勧告・指示は必要か

豪雨シーズンが近づいている。 雨量が増えると、避難準備・避難勧告・避難指示が市町村から市民に向けて発令される。市民はそれに応じて、もしくはそうした警報を待たずに避難することが理想とされている。 第六十条 災害が発生し、又は発生するおそれがある…

ゴジラKOM雑感

・映画館で涙ぐむのはガメラ対イリスの雲上戦以来だった。・具体的にはラドンの登場からアルゴとの空戦までのシーン。かっこよすぎた。この映画との出会いに感謝した。・製作陣はイリス戦も参考にしてたんじゃないだろうか・本当にラドンかっこよかった・そ…

柔らかい現実と硬い現実

自然災害と戦災を同列に扱うことができるか否か、ということを先週書いた。このときわたしは、復興という観点では同列視できない部分があるという立場をとった。 しかし、個々人の体験という観点においては、自然災害と戦災は共通する部分があるとおもってい…

弟の個展

弟の個展が神戸市東灘区のアートギャラリーでひらかれています。 きょう10日から、6/30まで。 http://street-gallery.net/top/category/upcomming/ 高原秀平展 星のモザイク 2019年6月10日(月)~6月30日(日)9:00~21:00(最終日は15:00まで) 上の写真は京都…

戦災と天災

『月刊社会科教育』という小中学校の社会科の先生を対象とした雑誌が、2011年8月号で「”災害の歴史”と人類の叡智」という特集を組んでいる。東日本大震災の直後の時期であり、社会科教育で災害をどのように扱うかがテーマとされている。 その中に、谷和樹氏…

黒田裕子は二人いる

看護業界で著名な「黒田裕子」さんが同姓同名の2名おられると今先輩から教えていただいて衝撃を受けている。 おひとりは、阪神・淡路大震災で災害看護の分野を切り拓いた黒田裕子さん。2014年に亡くなられた。 おひとりは、北里大学看護学部教授の黒田裕子さ…

防災教育に関する研究はどれくらいのペースで増えてきたのか

Ciniiで「防災教育」で検索し、論文の発刊年次ごとに数を出してみた。 ざっくりグラフにするとこんなかんじ。 査読論文も紀要論文も学会発表も分けずにカウントしている。 また、微妙に重複があるはずだが、おおまかなトレンドを知りたいだけなので除去して…

関東大震災に教育界はどう反応したか(平野・大部2017)

東日本大震災の後、やはり防災教育は大切だということで、ちゃんと学校で防災を教えましょうという方針が国で固められた。(文科省内のページ:学校安全<刊行物>:文部科学省に答申や参考書がまとめられている) 防災教育は東日本大震災(2011年)のあと初…

リテラシー

大多数の人間が自分よりいくぶん愚かであり、読解力や共感能力に欠け、たいてい政治的に不十分な見解を持ち選挙ではいつも間違った選択をしている…と、大多数の人間が思っている。そういう時代であるような気がする。マジョリティとは自分より少し未熟なひと…

そぁそ

翻訳しててキーボードを見ずに「しかし」と打ったら指がずれてて「そぁそ」とワードに入力されてた。ちょっとかわいいだとおもった。But familiar hills are still there.「そぁそ、稜線は以前と変わらず目に親しい。」

災害を待つ

生まれて初めて、災害を待っている。 「人と防災未来センター」という不思議な名前の研究所に勤めはじめた。 ふだんは研究をしている。しかし大地震、津波、またその他水害などが起きると現地支援にゆく。日本中どこでも、基準を超える震度であれば、緊急参…

ゲーム・オブ・スローンズ Season1の個人的に好きなシーン10選

GoT・Season8が完結する。その復習としてS1から順に観なおしている。 というわけで、あえてSeason1で好きなシーンを挙げてみたい。 1.ジョンの初体験未遂を聞くワクワクサム(S1-E4) この笑顔である 中学生か君は ナイツウォッチ見習いになった庶子ジョン…

カール・レフラー考

さる伝統ある大学の名誉も実績もある教授が、自分の論文に、存在しない神学者の存在しない論文を「引用」した。ということがバレて、クビになった。本も絶版となった。 研究活動上の不正行為に関する調査結果について|東洋英和女学院大学 いったいこの事件…

穏やかな夜に身を任せるな。

いまの職場に入ってから、東日本大震災の映像を見る機会がすこし増えている。 当たり前だけれど、映像の「キツさ」には独特のものがある。阪神大震災の映像はテレビ局によるものがほとんどで、ある種の「落ち着き」がある。プロのカメラマンが肩にカメラをど…

いま読んでいるもの:金井淑子『倫理学とフェミニズム』(2013)

いつのまにか本棚に入っていた本を読んでいる。一節だけメモする。 倫理学とフェミニズム―ジェンダー、身体、他者をめぐるジレンマ 作者: 金井淑子 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版 発売日: 2013/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 私…

参照したいと思った論文の著書が逮捕されていた

研究計画を新しく立てて、先行文献をざくざく読んでいる。 これはなんだか参考になるようだ、という論文を見つけた。しかも著者は地元のひとだった。迷惑承知で、会いに行ってお話を伺ってみようかとさえ思った。テンションが上がる。 コンスタントに論文を…

「業者」とかいう謎の組織

日本に住み初めて、かれこれ30年以上になる。 日常会話についてはそれなりに慣れてきたつもりだし、日本語で書かれた本もそのまま読むことができる。ブログもこうやって日本語で書いてみている。それでも、なんなんだこれは、と不思議に感じる日本語に出会…

そういうことじゃないんです

阪急電車に乗っていたとき、80歳代ほどのおばあさんが杖をつきながらヨコヨコとホームから車内に入った。わたしをふくめて、座席に座っているひとの大半が即座に彼女の歩みを捉え、追った。おばあさんはドアから1メートル半ぐらい離れたところに空席を見つけ…

「先生方」という言い方が嫌いだった。

「先生方」という言い回しが、なんとも言えず嫌だった。いまもぞっとする。同系統の表現に「先輩方」「皇族方」がある。これもひどくイヤである。阪大に来て、実質的に初めてこの表現を聞いた。その前にいた大谷大学では一度も聞かなかった。阪大でも自分が…

あなたイズだれ、とりわけ女

阪神電車の窓にサプリ薬品の広告が貼り付けられている。薬剤のプラスチック製の容器はやや控えめに映し出され、それよりもこちらを向く若い女性の顔が大きく配置されている。有名な女優さんやモデルさんなのか、無名の方なのかわたしは知らないけれど、すっ…

休日について

日曜日に学会に行っていた。京都駅のまわりは人がとても多かった。朝から夕方まで主に哲学対話の話を聞いていた。そしてその振替休日を、きょう取った。 休みの日だな、という感覚をじんわり感じている。久しぶりなのか、初めてなのかわからない。 とくにこ…

ふみふみこさんの同世代感がはんぱない

ふみふみこさんの漫画が好きで、たまにぽちぽちと買って読んでいる。 どこらへんが好きなのか。ひとつは使われていることばが不思議とやわらかいこと。シュークリームの皮みたいなかんじ。それから、線がやわらかいこと。線もことばも、狙って「やわらかく」…

科研神社を建てよう

日本全国の研究者が参拝する「科研神社」を設立することをかんがえている。 たぶん菅原道真とかを祀る。 科研神社は、科研費その他競争的資金に応募する研究者や院生をひろく受け入れる。不採択が続いたときのお祓い、採択祈願の祈祷、おみくじの販売等をお…