しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

防災教育に関する研究はどれくらいのペースで増えてきたのか

Ciniiで「防災教育」で検索し、論文の発刊年次ごとに数を出してみた。

ざっくりグラフにするとこんなかんじ。

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査読論文も紀要論文も学会発表も分けずにカウントしている。

また、微妙に重複があるはずだが、おおまかなトレンドを知りたいだけなので除去していない。

 

まず、もっとも古い論文は何か。

Ciniiの検索結果では1975年と1977年に一本ずつ出てくるのだが、この2本は自然災害についての防災教育ではなく、工場などの労災事故を防止するための教育を論じたもの。

これらを除くともっとも古いものは佐古(1984)となる。たしかにこれは自然災害に関する学校での防災教育を扱っているが、「教師の指導活動と学校経営」がメインの議論で、防災教育はそれを調査するための題材にすぎない。Ciniiで引っかかる限りでもっとも古い防災教育関係論文は林(1985)らしい。機関リポジトリで読めるものとしては水野欽司(1987)がもっとも古い。水野は「稲むらの火」を取り上げたひとで、この論文も真正面から防災教育について論じている。32年前の論文だけれど、現在扱われている論点をすでにほぼ出し尽くしている。

 

量の増加についてはどうか。

阪神・淡路大震災があった1995年の時点では9件、翌年は17件。それ以前と比べるとたしかに増えているが、一挙に拡大という印象は受けない。ところがその後の10年間が重要で、20-40件で推移し、着実に論文数が積み立てられている。そして中越地震(2004年)と中越沖地震(2007年)が大きなきっかけとなって70件近辺で推移。中身を検討したわけではないのだけれど、阪神・淡路大震災から防災教育に関わり始めた新鋭世代が、この時期にフル操業していたような印象。

東日本大震災があった2011年には100件、2012年には200件の大台に。しかしその前年、2010年の時点で92件もあったことに驚く。阪神・淡路大震災から中越中越沖地震まで積み重ねてきた経験の厚みをもって、2011年の東日本大震災を迎えたというストーリーがいちおう描けそう。