しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

2018-01-01から1年間の記事一覧

『エヴァンゲリオン』と『まどか☆マギカ』を結ぶ作品としての『少女革命ウテナ』

『少女革命ウテナ』(1997)を初めて鑑賞して衝撃を受けている。今更かよ。 以下は単なる印象の範囲を出ないメモ。『ウテナ』は『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)と『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)のちょうど中間に位置する作品なのではないか、と思わ…

『トトロ』のお父さんのすごいところ

『となりのトトロ』に登場する大人たちの中で、サツキとめいのお父さんはひときわ大切な役割を担っている。このひとは、すごい。 いちばんすごいのは物語終盤の「案外そうかもしれないよ」と笑って、窓際のとうもろこしを手にする場面。 お母さんの病院にお…

彼女だけが聞くことができない。

たとえば90歳のお婆さんが無謀な運転をして、57歳の通行人の女性を死なせてしまう。ほかに数名の怪我人が出る。 事件の直後からさまざまな「ことば」が生み出される。生き延びた怪我人へのインタビュー、亡くなったひとの遺族の声明、加害者の息子の「免許を…

「ズキズキ」と「ずきずき」

授業で擬音語・擬声語と擬態語の区別を扱った。擬音語・擬声語は、「ガシャガシャ」「ワンワン」のように、音や声の様子をことばに表したもの。擬態語は「そわそわ」「うろうろ」のように、ものごとの様子を表すもの。 書き言葉では、擬音語と擬声語はカタカ…

「生活保護は家がある人のものだから帰れ」

私が初めて野宿する人の生活保護の申請に同行して福祉事務所に行ったときのことを少しご紹介しましょう。その方Aさんも初めから生活保護を希望していたわけではありませんでした。60歳になり年金を受給できるようになるが、住所がないので困っていると相談し…

つぶを見つめる

わたしの母には不思議な「科学のセンス」が昔からあった。「科学のセンス」とは何であるか明確に答えることができないのだけれど、情理や倫理とは別の次元で世界をクリアに把握する感覚、とでも仮定義しておく。 このセンスは家族のなかでおそらく母だけが強…

声と傷: 朴璐美様のリテイク

『∀ガンダム』のロラン役、『鋼の錬金術師』のエド役で有名な声優・朴璐美さんのロング・インタビューが非常に面白かったので紹介したい。 いろいろなことが語られているが、いちばん心に残ったのが『鋼の錬金術師』の有名な「君みたいな勘の良いガキは嫌い…

「なろう」系主人公たちを鎧袖一触するキャッチコピー

人様の子どもの税金で(運営される)老人ホームに行くことになる

それが税の根本的な役割だよな。

アメリカで中絶が違法・道徳的悪となった経緯

州によるが、現代アメリカでは人工妊娠中絶に強い制約が課されている。Pro-choice(女性による選択に賛成=中絶の権利に賛成)派と、Pro-life(胎児の生命を守ることに賛成=中絶に反対)派の論争はアメリカ社会を二分するものだというイメージがある。中絶…

籠池夫妻と差し入れの書籍でコミュニケーションを試みるという記事を読んだ

大阪拘置所に接見禁止のまま長期間拘留されている籠池夫妻に対し、差し入れの書籍で間接的にコミュニケーション?をはかっているノンフィクション作家さんの記事。面白い。 大阪拘置所は、夫妻に対する面会や、手紙や写真のやりとりを禁じている。そのため支…

じぶんの身体の大きさがわからない

わかっていないこともないのだけれど、意外とわかってないんだなと最近わかってきた。 わたしはからだが大きい。健康診断で身長測定されると、おおむね177〜8センチぐらいの数字が出てくる。ただし横幅は無い。ススキが本とノートを抱えて歩き回っているよう…

風に否定される哲学者

私は地にたずねてみました。すると地は、「それは私ではない」といいました。地にあるすべてのものが、同じことをうちあけました。海と淵とその中をうごめいている生物にたずねてみました。するとそれらは答えて、「私たちはあなたの神ではない。私たちの上…

ブリュメートロニャンでは笑うときに手を叩かなかった

日本の若者の多くが、笑うときに手を叩く。とくに柏手を打つようにパン、パン、パン、と叩くのは、けっこううるさいのでやめてほしいとおもう。叩いている本人が思っている以上に(あるいは思っているとおりに)響く。地上でパンパン叩く音が6階まで聞こえて…

タイリュウの台所実験

ずいぶんと子どものころ、大きくなったら何になるのと聞かれると、科学者になりたいと答えていた記憶がある。野球選手やテレビタレントや宇宙飛行士ではなかった。 科学者ということで何をイメージしていたのか。それは、白衣を着て、顕微鏡を覗き、野山で昆…

被害者をだまらせる技法・再々 元次官の援軍を務めるひとたち

財務省の次官がテレビ局の女性記者に猥褻な言動を繰り返していた。女性記者は自身の上司に相談したが取り合ってもらえず、次官とのやりとりの録音を週刊誌に提供して告発した。 数ヶ月前、わたしはジャーナリストの伊藤詩織氏の『Black Box』の読後感想を書…

燃やさないでね

「危険物取扱者」資格の試験が大学構内で開催されているようなのだけれど、その受験者らしき人たちが構内の喫煙ブースに入りきれず、その周りの落ち葉だらけの樹間でタバコを吸っていたのが面白かった。

いろいろな話し方

被災者支援を23年間されてきた(いまも続けている)方にお会いした。派手なことばを使わず、声を張り上げず、得意げにならず、けれども確かなことを、ぼつぼつ、ぼつぼつと語られた。 聞いたことをすぐにまとめようと思い、地元のよく知っている喫茶店に入っ…

大阪大学図書館の収蔵書検索結果が「隣の本」も表示するように

いま偶然見つけたのだけれど、図書館収蔵書の検索結果に「隣の本」という項目が追加されていた。 アーサー・フランク『傷ついた物語の語り手』を読んでいると、T. パーソンズの「病人役割論」を何度も批判している。そこでパーソンズの本を検索した。 すると…

ローソンのリラックマが谷間を強調してるように見えてしまう

中央のクマです。

音と時: いつのまにか雨が止んでいる

たしか火曜の真夜中、雨がざああと窓の外で降り始めた。そのざああの音を聞いてしあわせな気持ちになった。まさにいま降り始めた細かな「ざああ」のなかへ、強くて芯のある「ざああ」がさらに補充され、音の密度が高まってゆく。落ちる雨粒の一筋ずつを聞い…

黒板を背にする

4年前、当時在籍していた大学を出るとき、後輩やお世話になった職員さん達に「これまでは黒板に向かって座っていたけど、これからは半回転して黒板を背にしたい」と見栄を切った。それから4年。きょう初めて、ひとりで黒板を背にして、40名超の新入生を前に9…

死ぬほど実現したいという意識が最低条件

「いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」すごい文章やな、と思った。「死ぬほど実現したいという意識」って具体的にどんな意識だろう。どんな態度や言動なら「死ぬほど」とみなされるのだろ…

ムッダイー

疲れていたり、悩み事があったり、あるいは風邪で寝込んだりしていて、2日ほど家に閉じこもって過ごしたその翌朝、部屋の外に出るといつもと変わらず鳥が鳴いていて、木々が葉を空へ向けていて、ゴミ収集車が普段通りに動いている、それらを見たときの、世界…

ノモンハン事件がわからない。

ノモンハン事件がわからない。 満蒙・日ソの不安定な国境に広がっていたある種の「雰囲気」としかいいようのないものが、各当事国の戦略や時勢と称するもの(それは本当に実在したのか?)によって次第に一つの焦点へと強引に高められ、最終的に巨大な局地戦…

新歓シーズンの学生たちと、「エコ・レンジャー」

新歓シーズンに入った。キャンパスではサークルの勧誘が始まっている。花見の場所取りを示す札が樹の幹に括り付けられ(桜の樹に対してあまりに礼を失した態度ではなかろうか…哺乳類風情が…)、体育会系の部員が女子マネ候補を求めて徘徊している。 ところで…

戸籍とじぶん

区役所に行った。「戸籍」に関する窓口があった。 わたしがこの窓口に来ることがあるかどうか、わからない。もしあるとすれば、じぶんの子供が生まれたときと、親が死んだときだろう。 いずれにしても、「家族」のことだけれど、自分自身ではないという意味…

「ちいちゃんのかげおくり」を教えられなかった先生のこと

小学校の国語の教科書に「ちいちゃんのかげおくり」という短編小説があった。多くの人が知っているだろうので筋の紹介は省略する。物語は「空襲」を軸に展開する。 この物語を学校で学んだとき、担任はベテランの先生だった。その先生の年代をいまざっと逆算…

桜の花は何色か

キャンパスの桜は今日が見頃のようだ。昨日は西宮市に行ったが、そこでは緑の葉も強く芽吹き始めているのを目にした。同じ阪神地域といっても、西宮(兵庫県)と大阪では、桜の時期が3−4日ほど違うのかもしれない。 朝、満開の桜を眺めながら校舎に向かっ…

読みたいもの

第二外国語にドイツ語を選んで自信満々にドイツ語唱えてみたら発音も文法もちょっとめちゃくちゃすぎですねと教員に言われてクラスメイトにクスクス笑われて涙目になる遠坂凛(大学一年生)の薄い本