しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

眠れ、刻み海苔を抱いて

昼食のあと、お昼寝のためにこどもを抱えてベッドまで運んだ。食卓には「有明産 刻み海苔」のパックがあって、手に持って振ったり叩いたりするとシャカシャカバンバン音がするのでこどもが気に入っていた。こどもは運ばれるときにその「刻み海苔」パックを手に持っていた。無理に取り上げると泣くのでそのまま持たせていた。

ベッドで奥さんと二人がかりで寝かしつけに入ったけれど、眠ければ眠いほどぐずってハイテンションになり寝ない。けたけた笑って、大時化の甲板のうえにいる水兵みたいにぐらんぐらん揺れて泣いている。その手には「刻み海苔」パックが握られており、こどもがベッド上でばたんどたんひっくり返る音と泣き声と笑い声と「刻み海苔」パックのガシャガシャする音と食器洗い機の落ち着いた作動音が混じって、だんだんよくわからなくなってくる。よくわかる育児というものもあまり無いのだけれど。このままガシャガシャしてたら刻み海苔が粉末海苔になるね、と奥さんと話す。

あまりにガシャガシャがうるさいので、こどもがひっくり返ってわたしの足の指をぐにぐに触り始めたタイミングでそっと刻み海苔パックをわたしが掴み、眠たいのでそのままじぶんの胸に抱いて仮眠を試みた。わたしも奥さんもこどもも眠たかった。それでもすんなり眠りに入らず、有明海の波間にまどろみがぷちゃぷちゃ浮いているような気持ち。