しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

ぶっちゃけいま災害起きたらどうなるのか

コロナヤバい。マジでヤバい。高齢者や基礎疾患持ってるひとをすぐ重症病床に送る。さらに変異株がぱこぱこ襲ってくる。若くて基礎疾患無くても重症病床に引きずり込む。対策してても感染する。

ヤバい。ヤバいのでめっちゃ医療関係者がんばってる。 自治体職員もワクチン接種のオペレーション必死で回してる。自衛隊も大規模接種会場うごかしてる。コロナヤバい。人類の努力もヤバい。毎日何十人も亡くなってる。かなしい。それが日常になっているのがさらにかなしい。

 

ヤバいのだが、ここで災害が起きたらどうなるのか。輪にかけてヤバい。

なにがどうヤバいのか、まああんまり世間で了解されているとは思えないので、いちおう専門の研究者として整理してみる。

 

1)避難所がヤバい

これはけっこうみんな気にしてると思うんだけど、やっぱ避難所はヤバい。

避難者は疲れてて、ストレス溜まって、栄養状態も良くない。すると免疫力も下がる。その状態でコロナの感染拡大が始まると、避難所全体でバタバタやられるという状況が生じうる。

避難所内でインフルエンザやノロが流行するのは過去事例でもしょっちゅうある。そもそもコロナ以前に、インフルやらノロが流行らない避難所をつくるべきなのだけれど、まあ流行るときは流行る。それがコロナになる。

 

どうすればよいのか。第一に基本的な防疫である。マスクしろ、手指消毒しろ、接触の多い箇所を消毒しろ、ゴミは気をつけて捨てろ。飛沫対策と避難者の健康維持のためにパーティション入れろ、段ボールベッド入れろ。以上の物資・装備を備蓄しろ。繰り返していうが、これはコロナ以前にも守らなくちゃいけないことである。

第二に、ゾーニングである。感染者・濃厚接触者と、それ以外の避難者のエリアを分けろ。しかしこれは避難所施設ごとに設計しなきゃいけないし、一般の避難所運営スタッフが導線ふくめたゾーニングの知識を持っているわけではないので、ヤバい。

第三に、自宅療養者や濃厚接触者の情報共有と事前案内とフィルタリングをしろ。ゾーニングをしろと書いたが、避難施設そのものを分けれるなら一番良い。けど、感染者用の避難施設を用意しても避難所運営スタッフや感染者自身が知らなかったら意味がない。そこんとこ徹底しとく必要がある。

以上の3点は昨年から内閣府とかうちのセンターでも繰り返し言ってきたのだが、なんせ日本には都道府県が47もあって基礎自治体が1700あるので、ぜんぶの市町村のぜんぶの避難所でこういうことが完備してるわけではないとおもう。ヤバい。

ヤバいのだが、なんとかヤバくならないようにがんばってる自治体職員や医療関係者がいるので、応援してくれ。

 

で、後に書くように病院もヤバいので、避難所で感染者が多数発生して症状が悪化しても病院へ搬送できないかもしれない。その先には、避難所で感染が拡大するが、十分なケアを受けられないまま多数の避難者が命を落とす、災害関連死が増えるという最悪のシナリオが待っている。

 

2)避難がヤバい

と、言いつつ避難所の感染対策は関係者ががんばっているので意外とヤバくないかもしれない。少なくとも昨年7月の熊本県豪雨では避難所での感染拡大は無かった(変異株もまだなかったが)。しかしそうした取り組みは世間にそれほど知られていない。

知られていないまま、避難所ヤバいかもというイメージを多くのひとが持っているかもしれない。すると、避難所ヤバいので行かないほうが良いかもというひとが出てくるかもしれない。これはこれでヤバい。特に水害がヤバい。

これはもう単純で、やばかったらコロナ以前どおりに避難所行ってくれ。がんばってる自治体はちゃんと避難所コロナ対策してる。「洪水や土砂災害の避難指示が出てるけど、避難所でコロナうつされたらイヤだから避難しないでおこう」という判断がいちばんヤバい。明日のコロナより今の避難を優先してくれ。

 

あと、「コロナ患者/濃厚接触者は避難所に入るな」みたいなことは絶対言うな。ちゃんとしてる自治体はちゃんとゾーニングや消毒してる。不安だったら避難所運営スタッフに聞いてくれ。これはもう人権問題なんで、自分の不安のために他人の人権侵害したら来月には自分がしっぺ返しくらうことになるぞ。そういうこと言うひとはまずいないと思うけど、念のために書いた。

 

3)病院がヤバい

特に地震災害では、発災直後に病院の需要がスパイクする。コロナで病院のキャパがぎりぎりのところに、普通に災害が起きる。普通に重軽傷者が多数やってくる。

キャパを超えたら物理的にどうしようもない。最終的には広域搬送しかない。広域搬送がどれくらいできるかは災害の規模によるが、コロナでは日本中がの病院でキャパがぎりぎりなので、搬送先も余裕がない。そこらへんをどうマネジメントするのか、厚生省と内閣府と各ブロックはちゃんとかんがえてくれ。角度とか。

 

4)災害対策本部がヤバい

これはけっこう見落とされがちではないかと思うのだが、県も市町村も、災害対策本部はめっちゃ三密である。本部スタッフは過労で免疫力が落ちるし、応援職員も多く出入りする。

 

災害対策本部は、その自治体の意志兵站情報を担っている。本部の機能が低下するとは、避難所に食料が届かなくなり、情報が収集整理されなくなり、そもそも災害をどう乗り切ってゆくかという意志が曖昧になることである。災害対策本部の役割は一般にはあまり意識されていないのだが、やはりとても大事なのだ。コロナのヤバさはそこを突いてくる。

 

去年の熊本県7月豪雨もけっこうヤバかった。幸い何事もなかったが。災害対策本部がクラスター化したら、その自治体の災害対応は消失する。市町村の本部がやられたら都道府県でなんとかするかもしれないが、都道府県の本部で流行したらどうするのか、という問題がある。

この問題を回避するためには本部スタッフにワクチンを先行接種するのが最良だと思うのだが、あんまりそういう話は聞かない。

ここらへん、「自治体職員が住民より先に隠れてワクチンを射ってた」みたいな話になると炎上案件だが、各首長や政府が災害対策本部機能維持の必要性をあらかじめきちんと説明すればそんなに混乱しないんじゃないかともおもう。

 

ちょっと危機感を過剰に煽るような書き方をしてしまったかもしれない。避難所については、対策してるところはその分だけ防御力は上がってる。その分は信頼してくれ。

おそらく一番問題なのは、わたしたちの現実認識である。災害が無くてもコロナがこれほどヤバいならば、さらなるヤバさは追撃されないだろうという心理がどうしてもはたらく。しかしコロナと自然災害は互いに独立な確率事象である。コロナのヤバさをどれだけ認識してもしなくても自然災害はやってくる。「ウイルスは忖度しない」はけだし名言だが、同様に活断層も線状降水帯も、現在のわたしたちのヤバさを全く忖度しない。「ヤバさの二重掛けは無い」という願望が本当のヤバさだ。「今日の未明にも二重掛けが現実化しうる」という認識があれば、わたしたちはヤバさを半分のりこえている。