しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

プロジェクトマネージャーっぽいことを初めてやっている

プロジェクトマネージャーっぽいことを生まれて初めて職場でやっている*1

担当中のプロジェクトはまだクローズしていないが、おおむね終端が見えてきたので自分なりのふりかえりとしてこれまでの経験を言語化しておく。

 

どういった職場か

公的な事業を行っている団体で、そのミッションの一部に研究機能がある。

自分はそこに研究者として任期雇用されている。狭義の研究活動のほか、他部署(非研究者)の社員と合同チームで団体の事業に携わることがある。今回の話はその合同チームでの、狭義の研究ではない仕事に関すること。

合同チームの構成は一般の企業などに比較してやや特異ではないかとおもう。研究員の任期は最長5年で、自分は3年目。同じ部署に9人いて、任期内でコロコロ入れ替わってゆく。平均年齢は30代中頃~後半。

他部署の社員はもう少し年代が上で、平均を取ると50代になるかもしれない。正社員で、終身雇用が前提。だいたい2-4年ぐらいで他部署に異動してゆくようだ。

 

どういったプロジェクトなのか

自分がマネージャー的に配置されているプロジェクトは2つある。

1つは他団体との共同事業で、いろいろと大掛かりなプロジェクトである。毎年3回実施しており、提携先団体はそのたびに変わるがこれまでは基本的にルーチンワークだった。だが今回は新型コロナの影響で過去のルーチンが使える割合がかなり小さく、その点でさらに大掛かりなプロジェクトとなっている。

このプロジェクトでは自分は実働部隊のチームリーダーに設定されており(責任者という意味では、もっと上に何人もエライ人がいる)、タスクを整理する、工程表を組んでみる、相手先と協議する、チームメンバーにタスクを割り振って進捗を管理する、といったことをやっている。

こうしたことを意識的にやっているのには苦い経験がある。昨年度に別種のプロジェクトでサブリーダー的な仕事を宛てられたのだけれど、こうした指揮や割り振りの感覚がわからず、担当チーム全体の作業量の拡大の制御が全くできなかった。そのため、同僚の研究員達に相当の負担をかけていた。

 

もう1つは職場内のプロジェクトだが、4つのサブチームがほぼ同時並行で動いており、その各チームの調整をするという担当になっている。開発者3名と営業部員1名によるチームを4個つくり、各チームが別製品を大規模展示会で時期をずらして出品してゆく、みたいなかんじ*2

これも基本的に毎年同じことをやるルーチンワークだったのだけれど、新型コロナの影響で過去のルーチンが使える割合が小さくなり、各サブチームが新規プロジェクトになっている状態。

こちらは上の直轄リーダー型と異なり、本当に「調整」「マネージャー」というかんじ。工程表を引いたりタスクを管理したりするのはあくまで各サブチームのリーダーなので、自分がそこに介入してゴリゴリするのではない。しかし状況によっては決心して限定的に介入が必要なこともある。どこで入るか、どこで引くか、頃合いがとてもむずかしい。介入の仕方がうまいわけでもなく、かといってじっとじっと我慢しておくのは明らかに不適切だという場面もあり、判断と行動がむずかしい。

 

意識していたこと

いま振り返ってみると、チームメンバーの火力を最大化するより、各自の経験値取得を最大化することのほうを自分は重視しているような気がする。研究員の任期が短いので、新人は半年ぐらいまでは見習いモード、その後2年目が主火力担当、3-4年目は中堅・ベテラン、5年間勤め上げる人は例外的、みたいなピーキーな構成となっている。この構成で現時点の火力をただ最大化しようとすると、作業の割り振りと経験値取得に激しい偏りが出てしまい、長期的にはチーム全体の火力が乱高下する。また、現実的にも過去ノウハウの継承を常に意識しておかねばならない(ここらへん、 大学オーケストラと同じ問題を抱えているのだろう)。

こういった環境なので、(自身を含めた)メンバーの経験値獲得の機会が増える/失われることが、マネジメントの順調/エラーの指標のひとつとなっている。マネジメントの良し悪しについて、工程表の進捗具合とは別の指標を複数持っておくことは重要なことなのだろうといま振り返っておもう。

 

2つ目の調整型のマネージャーとしては、自分の役割を繰り返し再定義することが重要らしい。これも「意識していたこと」というより、いまになって気づき始めたことである。問題がいろいろなところに潜んでおり、単線的な予測が難しく、解決策も多様であるので、「自分の仕事はこうだ」という定義が硬直していると状況に追随できない。実際には自分は役割の手持ちレパートリーが少なく、この再定義がうまくできてきたわけではない。ここは経験がものを言うのだろうか。

 

実感あれこれ

プロジェクトそのものの客観的な難易度や規模は1つ目の他団体共催プロジェクトの方が上なのだけれど、マネジメントの主観的な難易度は2つ目の職場内プロジェクトの方が格段に高い。1つ目は直轄リーダー型で、2つ目は内部調整型。

2つ目のプロジェクトは「開発部と営業部のカラーの違い」みたいなのもあれこれ出てくる。こうした場合は「このソフトを入れればだいぶマシになるよね」みたいな「銀の銃弾」型の解決策はほぼ無い。腰を据えてまずは対症療法を積み重ねるしかない。問題が露呈してからでは根本的対処が難しいことが多く、問題が表面化する数週間前に核心を掴んで対策してゆくことが理想だと思うけれども、今回はそういったことはほぼできなかった。直轄リーダー型であれば問題を自分で見つけて自分でごりごり解決してゆけばよい(そのため、自分の問題突破能力に比例して問題発見の射程も広がる)が、調整型では問題発見と問題解決が即座にリンクしない。思い通りに動かないものを、全体像と最終目標を見すえつつ、どう制御してゆくか。ビシッとした答えや必殺技を持っているわけでもなく、むずかしい。

 

こういう仕事は生まれてほぼ初めてで、周囲になお迷惑をかけつつ当人としては経験値を荒稼ぎしている実感がある。大昔のMMOにあった「経験値2.5倍月間」みたいな。

前述のように研究員は任期制で入れ替わりが激しいため、そのなかでこうしたマネジメントの文化を組織内にどう定着させてゆけるかが自分の次のプロジェクトになっている。

 

 

*1:本物の?プロジェクトマネージャーと仕事をしたことがないので、正直なところどういった仕事なのかわかっていない。ただ、プロジェクトをマネジメントしてるよなぁとおもうので「っぽい」と書いておく

*2:あくまで形式的な喩えです。中身は全く違う仕事内容。