しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

これまで見た夢をおおむね覚えている

 他にも同様のひとがいるのか、それとも自分だけの特殊技能なのかわからないけれど、わたしはこれまで見た夢をだいたい覚えていて、(後述する条件があえば)思い出すことができる。そのことについて書く。

 

 まず、自分が覚えている夢(思い出せる夢)は成人以後のものに限られる。たぶん25歳以後くらいからだろう。

 「だいたい覚えている」と上に書いたのはやや誇張で、本当に全て覚えているわけではない。わたしが見る夢は実感としては3種類くらいに分かれている。第1に、やや疲れているときに仮眠した際に瞬発的に見る、数秒間の強烈な夢。第2に、情景やストーリーが非常に濃い、長い夢。第3に、そのいずれでもない、見たような見ていないような、ぼんやりとした夢。

 覚えているのはもっぱら第2のタイプである。このタイプの夢にはしばしば不思議な建物や街並みが登場し、徒歩や車での移動を含むことが多い。それなりにはっきりしたストーリーを持つことも多い。

 このタイプの夢は1ヶ月に1度見るか見ないか、ぐらいの頻度である。だから、もし覚えている夢を数え上げても100には満たないとおもう。

 

 正確に言うと、たしかに覚えているのだけれど、いつも思い出せるわけではない。

 思い出すのはおおむねベッドでまどろんでいるとき。夢の記憶は通常の記憶とややメカニズムが異なるらしく、意識が明晰なときは思い出しにくい。いまこのエントリを書きながら思い出そうとしてみたけれど、せいぜい3つくらいしか映像が戻ってこない。ところが眠りに入る前、うとうとし始めたころ、過去に見た夢の情景が自然と蘇ってくる。うとうとしながら、ああこれは前に見た夢だな、とぼんやり感じている。いつ見た夢であるか正確に確定することはできないけれど、10年以上前に見た夢のはずだと気づいて驚くこともある。

 そして眠りに入ってしまうと、また別の夢を見ることになる。その夢もいずれ別の日に思い起こされることになる。ただし、古い夢も新しい夢も、はっきり目覚めているときに思い出すことはできない。深夜限定で開店するレンタルビデオ店のようなものだ。

 

 ところで奇妙なことに、わたしはこの「一度見た夢をもう一度おもいだす」という出来事をくりかえしくりかえし体験しているのに、その思い出したということ自体を何度も忘れてしまう。うとうとしながら、ああ、また思い出した…と気づいている。しかし目覚めると、かつて見て、忘れてしまっていた夢を思い出したということ自体を忘れてしまう。

 この「想起の忘却」を何度も繰り返したあと、さすがにこれはもったいないような気がするとわたしは思うようになった。そこで、「わたしは見た夢を思い出すことがある」と覚醒時の自分でしっかり思い出しておくことにした。だから今こうやってこのことを書くことができている。ただし、思い出すということそのものを覚えているだけで、思い出される夢の中身は今は思い出せない。