赤坂 ぼくは聞き書きというのは、これがまったく初めての体験だったし、これまでにじっちゃんばっちゃんの話をまともに聞いたことがなかった。だから、いろいろ不安もあったけれども、聞き書きを始めたときには、もう裸になるしかないと覚悟を決めていました。最初に出てくるカンジキ作りの中島さんに会いに行ったとき、一時間くらい話を聞いたら、突然、中島さんが「昼寝だ、お前もそこに寝ろ」って言いだした。思わずこっちも、そうかと思って、日溜まりに寝たんですよ(笑)。
森 あれはすごく印象深かったです。
私が遅れて中島さんの家に行ったんですけど、赤坂さんが昼寝からフッと起きて玄関先の私を見たんです。裸と言いましたが、失礼な言い方ですが謙虚な身体と言ってもいいような、そういうものにその時、出会いました。
(赤坂憲雄『東北学へ 2聞き書き・最上に生きる』作品社、1996年)