同居者を殺害してしまった。一瞬迷った。けれども殺意に身を任せた。
この居心地の良い部屋に勝手に乗り込んだ向こうが悪いのだ。
わたしの行為は本当に衝動的だっただろうか。
いま、自問している。
さる筋から先日買い求めた凶器を手にした。
狙いを外さないよう、付属品の細いノズルを取り付けた。わたしは落ち着いていたはずだ。その動作は拳銃にサイレンサーを取り付けるのに似ていた。
わたしたちはわかりあえない。この空間はわたしのものだ。
共存の道はない。心の中で、相手への憎しみと謝罪がごちゃごちゃになっていた。
トリガーを引いた。
よく効いたらしい。そいつはひっくりかえって、立てなくなった。
完全に息絶えたと思ったが、ときたま手足をひくひくさせている。その姿がまたおぞましい。
断末魔の苦しみを味わっているのだろうか。人間にとっては10分ほどの時間でも、昆虫にとっては数週間分の体感時間かもしれない。
いや、やつらには苦しみや時間の感覚など無いのかもしれない。それはわからない。ただ、死にかけているすがたにはどうしても憐れみを感じてしまう。
毒ガスをもういちど噴霧してやろう。
遺体を処理したあと、空気を入れ替えるために窓を開けた。
小さいけれど心地よいわたしの部屋。そしてやはり小さいけれど住心地の良い、わたしの町。もちろん町は部屋とちがってわたしの占有物ではないが、大切な居場所だ。この国、この星に生まれたことに満足を覚える。黒光りの六本脚も、わざわざこの部屋にやってこなければ、ほかの場所で過ごせばよかったのだ。
そのようなことをぼんやりと考えながら見ていた夜空に突然にゅっと巨大な筒が現れた。大気を突き抜けてきた、無造作なただの筒。どこから伸びてきたのか、反対の端は見えない。なんだこれは、とあっけに取られて見ていた筒先から突然しゅううと白い霧が吹き出して、体が…動かな……
……しばらく目を話したすきに、気味の悪い2本脚のぬめぬめした生き物が部屋の隅で繁殖していたようだ。一瞬迷った。けれども殺意に身を任せた。この居心地の良い部屋に勝手に乗り込んだ向こうが悪いのだ。多細胞生物の分際で、自分は知能を持っていると信じ込んでいるらしい。わたしたちはわかりあえない。この空間はわたしのものだ。
共存の道はない。心の中で、相手への憎しみと謝罪がごちゃごちゃになっていた。トリガーを引いた。
よく効いたらしい。そいつはひっくりかえって、立てなくなった。完全に息絶えたと思ったが、ときたま手足をひくひくさせている。その姿がまたおぞましい。
断末魔の苦しみを味わっているのだろうか。わたしたちにとっては10分ほどの時間でも、哺乳類にとっては数週間分の体感時間かもしれない。