しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

嫡男が突然寝返りました

当家を継ぐはずの嫡男が昨晩、突然寝返りました。しかも実の父であるわたしの眼の前で……。

突然と書きましたが、実のところ以前からその兆候はわずかに現れてもいたようでした。ただ、仮に事を起こすとしてももう少し先ではないかと思っていたのです。正妻にもそのことを伝え、両名で密やかに観察していましたが、まさかこのタイミングで。いったい誰にそそのかされたのか…?!

 

これは当家および一族郎党の一大事であり、急を知らせる早馬を走らせ…る代わりに、Miteneで即時共有しました。

 

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3週間くらい前から、とりあえず体を仰向けから横向きにするところまでは進んでいた。

さらに足と腰をひねったり勢いをつけたりして、両膝が床面につく。

しかしこの時点ではまだ下半身のみの寝返りで、上半身と頭は横向きのままである。

とくに床側の肩が頭の重みに負けて動かない。その状態でも首を反ると上に視界が広がるので、とりあえずは満足していたようだった。この状態で止まっていて、寝返り完成までまだ2ヶ月くらいかかるんだろうねと話していた。

 

ところが昨晩、この「下半身うつ伏せ・上半身横寝」のひねり状態から、こどもが自分の首を上に浮かせた。すると視界の拡大と同時に頭の重心がぐらりと移動した。そのときのこどもの表情がわすれられない。視界の回転に伴ってわたしの顔が見えたので微笑みつつ、「あ、こういうこと…か…?」というような発見と次のステップへの試行が混じり合った表情。そして3度ほどぐらり、ぐらりと重心移動の感覚を確かめているところに奥様が間に合った。いったん動きを止めたのだけれど、再度トライしてすんなり両肩がひっくりかえり、首が頭を支えた。

 

かなりざっくり語り直すと、首の持ち上げ→視界の拡大+重心の移動の感覚の発見→首の持ち上げと重心移動の制御の試行→上半身の回転の完成、という流れだったようだ。

首の筋肉をうまく用いて頭を用いることが、重たい頭の重心移動につながる。いわばテコを使うように、最初の動きから目的までが連動する。いわゆる「コツをつかむ」という体験だったのだろう。

こうした連動体験は首の筋力や背骨や頭のサイズ、重さ、下半身の支えなど、体全体の構造に規定されている。しかしこの規定が運動より先にあるのではないようだ。これまで無秩序に近かった体の動作が、目的に沿って統制され、次の運動を準備する。その目的-運動の連動によって身体の構造が意味を再度付与される、と言ったほうがよい。