しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

無かったことにはならぬであろうか。全てのことが霧消し、元通りにならないだろうか。図書館の古い本棚の裏の壁を手で探っていると錆びついた取っ手にゆきあたり、それをゆっくり回すと異次元の歯車が逆回転しはじめ、時間がすべて巻き戻り、その間に起きたすべての努力と破壊と悲痛と希望と洞察が消失する、ということにはならないだろうか。そこでは原子力発電所は相変わらずあやふやに稼働し続け、人間社会と地域のさまざまな矛盾がまんべんなく先送りされている。そして全ていつもどおりの10日、11日、12日が過ぎてゆく。そのように、すべて無かったことにならぬであろうか。