しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

いま読んでいる本から: 金時鐘『朝鮮と日本に生きる』

たしかに不器用な私ではありましたが、選り好みだけはしない私でした。何事につけ人一倍好奇心が働くのです。薬売りが客寄せに奇術を見せびらかしています。もう少しで卵が孵えるという口上を信じて、日がな一日ひよこが孵えるのを待ちとおした市の日があり…

昔のひとは今より頻繁に気絶していたのではないか

昔のひとは今より頻繁に気絶していたのではないか。精神医学史を読んでいると、登場する人物がやたらと「気絶」する気がする。とくに、強いショックを受けたときに気絶している。あるいは、意識がフワーとなって何かに憑依されたり、予言したりする。 「昔の…

読んでいるものから:辺見庸『不安の世紀から』角川文庫、1998年

そのとき私、非常に不思議に思いましたのは事件の当初、最初のころなのですけれども、さして大きなパニックはなかったのですね。静かな現場といってもいい。あのサリンというものがまかれた直後に現場にいた人たちはどういう意味かわからなかったわけです。…

『逆襲のシャア』注解(1)解釈の目的と方針

以下は、富野由悠季原作・脚本・監督によるアニメーション映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の注解である。分量が膨らむことが予想されるため、回を分けて書いてゆくことにする。 作品の概要と解釈の必要性 『逆襲のシャア』は『機動戦士ガンダム』シリ…

R. J. リフトン関連文献一覧

R. J. リフトン(Robert Jay Lifton, 1926-)の著作、論文、かれに関連する文献を可能な限り網羅したリストです。元は修論に使ったものですが、じぶん以外にもだれかリフトンに興味持ってくれたら嬉しいなとおもってアップしました。 もう90歳なのに、さいき…

『シン・ゴジラ』の映画評をWEBRONZAに掲載していただきました

『シン・ゴジラ』の映画評を書きました。 (上)はけさアップロードされ、(下)も明日の午前中に載る予定です。 (上)では本作の演出の特徴を、「ゴジラの不気味さ」と「政府の対応プロセスの過剰な描写」の2つにまとめています。これは、たぶんたくさんの…

本気で樹木に語りかけることは可能か

本気で樹木に語りかけるということは、可能だろうか。可能だとしたら、どんな条件がひつようだろうか。 (1) 普通、誰かに語りかけるとき、返事があることを期待している。したがって、人間が語りかける相手は人間である。多少の例外としてペットに語りか…

いま読んでる本から:『無意識の発見(上)』

メスメルが自分で書いたものを読むと、メスメルは抑鬱期に入っていた。メスメルはそもそも真理を発見することなど絶望だとして、森を歩いては樹木に語りかけている。三ヶ月もの間、言葉を一切使わずにものを考えることをやってみている。しかしゆっくりなが…