しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片を毎日1000字くらいで書く。

ゲーム・オブ・スローンズの個人的に好きなシーン10選

挙げ始めるとキリがないのですが、とりあえず思いついた分を挙げてみました。

なお、各見出しの数字はシーズンとエピソードを表します。例えば(1-7)はシーズン1のエピソード7。

 

1. 初登場で鹿を解体してるタイウィン・ラニスター(1-7)

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七王国最強のチートキャラ、タイウィン。その初登場シーンがこれ。陣中でなぜか鹿の皮を剥ぎ、臓物を取り出して捨てている。慣れたナイフ捌きが素敵なイケオジ様。何気ないシーンだけど、淡々と鹿肉を解体しながらジェイミーを説教するこの場面だけで、初登場のタイウィンのキャラが観客に鮮烈に印象づけられる。なお、鹿はバラシオン家の紋章でもある。このシーンはバラシオン王朝をラニスター家が解体してゆくことの暗示でもある。

自分がGoTが好きになったきっかけのシーン。だってこれ、本物の動物の死体使ってるぽいんですよ??

 

2.娼婦に指導をするピーター・ペイリッシュ(1-7)

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上記解体の少し後のシーン。王都キングスランディングの娼館で、新人娼婦に稽古を付けるべイリッシュ公。オーオーイエスエスとアホみたいな喘ぎ声をあげる新人に、おまえ全然なってねぇよこの田舎モンとリトルフィンガーさんが指導する。

タイウィンとはまた違った意味で現実主義者であるべイリッシュ公のキャラがよく表されている。アホな男たちが女たちからむさぼろうとする夢など、全部マガイモノなのだ。誰もが曖昧な夢や名誉や家名や欲望に溺れている世の中で、自分だけが虚実の全てを知悉しているんだよ、という(でもキャトリン大好きすぎて自分語りしちゃうところなんかもあって、面白い人である)。彼のこの性格を、営業時間外の娼館の様子から描いたシーン。

 

3. 演劇を観る民衆とアリア(6-5)

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これも個人的に大好きなシーン。王都から離れた街の野外劇場で大衆演劇が開催されている。ロバート王の死、ネッドの刑死、ジョフリーの毒殺が舞台で「再現」されるが、劇中劇の登場人物は皆デフォルメ化されていて、本物たちとはかけ離れている。悪しきティリオン・ラニスターが裏で糸を引き、若き悲劇の王ジョフリーを毒殺したことになっている。

もちろんこれは真実とはほど遠い。しかし民衆にとっては、貴族たちの真実などどうでもよいのだ。自分たちが正史だと信じ込んでいるものを観て、笑い、涙する。これまでの本編の物語も、したたかに生きる市井の人びとの視線から見れば所詮は貴族同士の内輪争いにすぎない。GoTという作品自体のメタ的な言及を劇中劇で表現するというアクロバティックな演出。そして、みんなこんなの信じてるの?というアリアの顔が良い。

 

4. 長男からカノジョを紹介されたキャトリンお母さん(2-6)

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このニヤニヤがたまりませんな。GoTは全編通じて、人物たちの表情が豊かで、なおかつ無理が無い。かれらと比べると、日本の俳優たちの表情は、巧くはあるけれどたいてい画面にはめ込みすぎているように思える。しかめっ面で、観ていて肩がこる演技が多いのですよね。

 

5. ブライエニーに引くジェイミー兄さんの表情(2-10)f:id:pikohei:20180308205057p:plainf:id:pikohei:20180308205110p:plain

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基本的にイケメンで通しているジェイミー・ラニスターの顔芸が見られる貴重なシーン。巨躯の女騎士ブライエニーとの珍道中の最中、スターク陣営の素行の悪い兵士たちに誰何される。問い詰められて兵士たちを瞬殺するブライエニーの人間離れした戦闘能力にドン引きするジェイミー。静止画ではなかなか伝わりづらいが、このシーンのブライエニーはめっちゃカッコイイし、最後に「うわぁ…」と首を傾けるジェイミーの表情が最高。

 

6. レディ・キャトリンに臣従の誓いを立てるブライエニー(2-5)

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呪殺されたレンリーの幕屋から逃げ出したキャトリンとブライエニー。レンリーの仇を討つと悲壮な顔で言うブライエニーに対し、無為に死に場所を求めるだけではだめだと引き止めるキャトリン。ブライエニーはキャトリンに仕えることを申し出、キャトリンはそれを受け入れる。

自分はなぜこのシーンが好きなのか。考えてみると、ブライエニーの「行き場の無さ」のような気分をキャトリンが理解し、受け止めているというところ。剣の腕一本でどこでもフラッと生き延びてゆけるブロンと違い、ブライエニーは同じく剣の腕は確かだけれど、誰かに臣従する・所属するという生き方しかできない。基本的にウツ系のひとで、定められた生き方の外に出てゆくことができない。キャトリンはそれを見抜いている。主君を死なせた浪人騎士の辛さを理解する。ブライエニーの弱さに付け込むのではなく、弱さを含めて受け入れ、誓いを取り結ぶ。独特の、スレていない高貴さがある。この性格はサーセイやデナーリスにもない。最初から最期までレディ・キャトリンはレディなのだ。

お二人がもう少しお若ければオヴェリアとアグリアスだったのだが…いえ、なんでもありません、サー・ブライエニー。

 

7. ジョフリー陛下の笑ってはいけない披露宴(4-2)

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たくさんの見所があるシーン。(1)陛下のお戯れにめっちゃ顔を引きつらせてる新郎新婦ご両家のみなさま。トメンがちょっと笑ってからティリオンの横顔を見て「あ、笑ったらあかん雰囲気や」ってなるのもイイ。(2)ティリオンとサンサのほのかな絆。ドタバタ劇の最中、ロブ・スターク役の俳優が登場したとき、ティリオンがサンサの手にそっと自分の手を重ねる。ティリオンがジョフリーにいびられたとき、盃を取ってあげる。互いに望まぬ政略結婚をさせられた二人だったが、もしかしたら愛や信頼が生まれるのかもしれないと観客に感じさせる……のだけれど、サンサはこの後すぐ、流浪の生活に投げ込まれる。(3)昼下がりの黄金の陽光。長い影。この光の演出がほんとうに良い。ラニスター家の人たちはみんな金髪で、王は黄金の衣装をまとい、紋章も宴会場も黄色が中心の配色。そこに弱い夏の日差しが低く差し込む。欠けたることなきタイウィン以下ラニスター家の支配が既に斜陽にかかっていることを暗示する。

 

8. サンサの笑顔(6-9)

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この笑顔である。画像では暗くてわかりにくいが、この笑顔である。ただの地方領主のお嬢様にすぎなかったのに、苦労しすぎである。でもよかったね。

ネタバレになるので詳細は書かないが、ペットに餌をきちんとあげることの大切さを視聴者に印象づけた名シーン。

 

9. アリアの笑顔(6-10)

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姉に続いて、この笑顔である。ただの地方領主のお嬢様にすぎなかったのに、苦労しすぎである。刺繍したり矢を射ったりしていたころからあまりに遠くに来すぎた。でもよかったね。

ネタバレになるので詳細は書かないが、家族がお世話になった方におもてなしすることの大切さ(主に挽肉のパイ等で)を視聴者に印象づけた名シーン。

 

10. ウィンターフェルの日常(1-1)

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既刊全シーズンを一通り見たあと、シーズン1に戻って最初のこのシーンを観ると泣きそうになった。弓を練習するブラン、それを見守るロブとジョン、木馬に乗って笑うリコン、刺繍をするサンサとアリア、そんな子供たちを見守るエダードとキャトリン。ずっとこんな日常が続くと思っていた。だが、冬が来てしまう。歴史の歯車が彼らのささやかな幸せを引き裂く。**は断頭台の露と消え、**と**は謀殺され、**はジグザグに走らなかったので殺され、**は仲間たちに殺されてから蘇生させられ、**はソーセージを切り落とされる。善人が報われるのでもなく、悪人が生き残るのでもない世界。それを知ることになるだけに、このヒトコマが目に染みる。

なお、みんなを愛し愛されてるお父さんであるエダード・スタークを演ずるショーン・ビーンは、私生活で四回の離婚を経験しているらしい。役者ってすげぇな。