しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片を毎日1000字くらいで書く。

教室に油を引く

大学に来ると、校舎の床にワックスが掛けられていた。

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溶剤の臭いがもわっと鼻に巻き付いてくる。

写真でわかるくらいに、床はテカテカになっていた。これから数年かけて、塗り込まれたワックスはすり減り、揮発し、埃が溜まってゆくのだろう。そしてまたワックスをかけて、テカテカになる。

 

小学校のころ、教室で「油引き」をしていたのを思い出す。

学期の終わりに、教室の床板にモップで油をぬたーっと塗り広げるのだ。

検索してみると、「教室の板張りの床に定期的に油を塗る」というのは神戸市の小中学校に独特の文化らしい(神戸市「だけ」ではないだろうけれど)。

上掲記事によれば神戸市の小中学校の9割が上履きを使わない「土足」制をとる。わたし自身、「学校で上履きに履き替える」というのはアニメの世界のことだけだと思っていた。神戸の方が少数派だったわけだ。

土足では埃が立つので教室の床板に定期的に油を引き、埃を抑えるらしい。しかし埃を抑える効果は数週間で無くなっていた気がする。板材の保護が主要な目的なのではないか。

 

油を引くのは、ちょうど学期が終わって長期休みが始まるときや、あるいは新学期が始まるタイミングだった。だから油引きは季節や生活のスイッチが切り替わるしるしでもあって、なんとなく愉快だった。学期末の終業式が終わる。先生がどこかからか油の入ったバケツを教室に持ってくる。専用のモップで油を押し広げてゆく。白っぽかった床板が、突然真っ黒になる。靴底が床板のうえでぬたぬたする。独特の匂いがあるが、刺激臭ではない。床が柔らかくなったような錯覚がある。机と椅子を戻す。先生が「あゆみ」(通知簿)を配る。午前中で学校が終わり! 油引きの日はそういう日だった。

 

とつぜん思い出したので書きました。