しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片を毎日1000字くらいで書く。

ワシのかんがえる理想の『白雪姫』

 王子様のキスで目を覚ました白雪姫は、王子のための後宮に連れてゆかれました。

 そこには目もくらむような美少女がどっさり。白雪姫がインタビューしてみると、みな自分とおなじ経緯で王都へ連れてこられたのでした。ある日あやしいお婆さんに訪問販売のりんごを勧められ、ひとくち食べたところで気を失ってしまった。気づくと自分は親切なイケメン王子様に救命されたらしく、その流れでなんとなくこの後宮に連れてこられたのだそうです。

 

 じつは全て、悪い魔女でもあるお妃さまの仕業だったのです。魔法の鏡で国中の美少女を探し出しては、毒リンゴで昏睡状態に陥らせる。その後、腹心に言い含めて、王子が「偶然」この美少女と出会うように行幸スケジュールをセッティング。お妃さまは王子の唾液を解呪のトリガーとする魔法を毒りんごにかけていたので、かれがキスさえすればその地の田舎姫は昏睡から目覚めるのです。

 王子様は気づいていませんが、お妃さまと王子様はなかば共犯関係。この後宮もお妃さまが作り上げたようなもの。

 

 こうして国中の精鋭を揃えた後宮のなかで、白雪姫はとくに王子の寵を受けるようになります。それを確認したお妃さまは、ある晩、後宮の白雪姫の部屋を訪れました。

 

「息災のようですねえ、白雪姫。あなたが王都に来てくれてからは、わが息子である王子もたいそう機嫌が良く、以前にも増してご公務に励まれるようになられました」

「滅相もございません。これも後宮の管理者であられるお妃さまの御後ろ盾があってのことでございます」

「ほほほ、もともと妾があなたを見つけたのですよ」

「ファッ?!」

「この林檎をお食べなさい… 精力がつきますよ。一日も早くお世継ぎを宿していただかねば、ねえ」

「あっこの林檎にはなんとなく見覚えがある」

「つべこべいわずに食べなさい」

「むぐぐ」

「おまえが(王子の)ママになるんだよ!」

 こんどのリンゴは以前よりも強力な魔法がかけられていました。なんと、お妃さまは黒魔術のなかでも最もレベルの高い秘術「換魂の法」を用いて、白雪姫と自分の身体を入れ替えてしまったのです。

「そしてわたしが王子の妻となる…」

 

 オーマイブッダ!なんたる道徳的禁忌!これこそがお妃さまの目的だったのです。彼女は白雪姫の若く健康で美しい体を手に入れ、実の息子である王子の寵愛を受け、かれと交わり子を成そうというのです…!

(第一部・完)