しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

文系院生、工学型の「発表12分・質疑応答3分」学会発表を初めて体験する

一昨日と昨日、災害復興学会に行って発表をさせてもらった。

場所は兵庫県立大学の旧神戸商科大学キャンパス。初めて訪れたが、こじんまりしていて、建物と木々が美しくて、いいところだなぁと感じた。ここで学ぶ学生は自然と気持ちが落ち着いてくるだろうな、と思った。

 

学会運営は各所がきちっきちっとしてダレるところがなく、災害現場でぐりぐり実践しているひとたちの集団という雰囲気があった。

 

ところで単独での口頭発表を今回はじめてさせてもらって驚いたのは、ひとりあたりの持ち時間が15分しかないこと。発表12分、質疑応答3分という規定。

 

哲学の学会では「口頭発表30分、質疑応答20分」というのがよくあるパターンなので(もっとも、50分中45分くらい喋りまくってほとんど質疑を容れない人も多い……)、「12分と3分」というのは初めての体験だった。

とにかく発表者がどんどん入れ替わってゆく。発表者のみなさまはいずれも、研究背景、先行研究、リサーチクエッション、考察、発見、結論、今後の課題、提言といった流れでぽんぽんコンパクトに投げかけてゆく。とても効率が良い。

 

災害復興学会は学際的な学会で、都市計画、建築学社会学、質的心理学といった分野で自然災害復興に関わる研究者や、NGONPO・行政関係者が集まる。強いていえば理系7割:文系3割ぐらいのイメージだろうか。この「12分と3分」はたぶん工学畑のひとたちの文化なのだろうとおもう。

 

さて「30分と20分」に慣れた自分が「12分と3分」でやってみるとどうなるか。自然、どうしても内容を詰め込みすぎるはめになった。とくに自分は「どうやってその問題に入り込むか」ということ自体を意識して記述するので、序盤もたもた、後半はコンテンツ多すぎ、というかんじになったような気がする。反省点。

 

「12分-3分」型の口頭発表は、議論をぐぐぐと深める場というよりは、報告と情報交換をざくざくすすめる場ということなのだろう。じっくり議論したい場合はポスター発表のほうが良い。(※ここまで書いてやっと気づいたが、今回自分はポスターと口頭の両方をさせてもらったのだけれど、ポスター発表でとりあげたテーマがむしろ口頭発表の方に向いていた。逆にすればよかったかも?)

 

30分-20分と12分-3分のどちらが優れているか。当然一長一短、結局のところ文化と伝統の問題で、郷に入れば郷に従えというものでしかないだろう。

個人的な意見を言わせていただくと、哲学の学会で「では原稿を読み上げるかたちで発表させていただきます」と言って、後は顔を上げずにただ原稿を早口でだーっと読み上げてゆくだけという人も多いけれど、あまりに芸が無い。対話もない。

他方、「質疑応答3分」というのも、実際に参加してみるとちとしんどいなと感じた。やはり対話にはなかなかならない。3分では質問者2人がぎりぎりで、他のひとが手を挙げるかもとちょっとビクビクしてしまう。

 

発表15分・質疑応答15分というのがちょうど良いような気がする。しかし発表者数を半減させることになってしまう。唯一の解は無いのだろう。

 

畑違いの人間が迷い込むと、受け入れる側にはいろいろご迷惑をおかけするし、自分でも慣れないことにぽつぽつつまずくけれども、経験値を荒稼ぎできることは確かで、参加させてもらってありがたかった。

最後になりましたが、ポスター発表、口頭発表のそれぞれをお聞きくださったみなさま、ご質問・コメントをくださったみなさま、また学会本部のみなさまにお礼申し上げます。本当にありがとうございました。改めて気持ちを込めなおして研鑽に励みたいと思います。