しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片を毎日1000字くらいで書く。

阪神大震災当日の二階俊博議員の動き

 二階俊博衆院議員(現自民党幹事長、当時新進党所属)が、1995年1月17日の阪神大震災発生当日にどのように移動していたか。たまたま当人の手記(二階俊博『日本の危機管理を問う 阪神大震災の現場から』プレジデント社、1995年)をちらっと読んだのだけれど、移動の激しさに興味を持ったので少し紹介してみる。

 

 阪神・淡路の地震が起きた午前五時四十六分、丁度私は大阪の東洋ホテルで、新幹線の一番電車に乗ろうとして、十二階からエレベーターに乗る寸前でした。(…)

 とっさに私は、むしろ状況調査のために直ちに現地に赴いたほうがいいかなとも考えましたが、丁度その日、私どもの「明日の内閣」、いわゆる政権準備委員会の閣議を開く日になっていましたし、私一人が現地へ飛んでいったところで、何ほどのこともできるわけでもありませんので、やはりまず東京の新進党の同志にこのことを伝え、共に対応を協議することが重要であると思い、取り急ぎタクシーを拾って、新大阪へ走りました。 

 

大阪の東洋ホテル→東京を目指して新大阪駅へタクシー移動

 

 しかし、新大阪に着くと新幹線は不通になっており、さらに伊丹空港にかけつけました。伊丹から羽田に飛び、モノレールを乗り継いで、国会に到着したのが九時ちょっとすぎでした。 

 

新大阪駅伊丹空港羽田空港→国会

 

 「明日の内閣」の閣議はすでに開かれており、新進党は直ちに現地に調査団を出そうということになりました。(…)一番早い便としてまず岡山空港へ向かい、そこからあらかじめチャーターしておいた民間のヘリコプターで現地へ向かうことにしました。(…)江田五月議員が地元岡山市消防団から、防災服や長靴等を借りて、岡山空港に用意しておいてくれました。

 

 

国会→羽田空港?→岡山空港

 

 私たち一行が現地の上空に到達したのが午後三時二十分頃で(…)自衛隊の姿などはほとんど見かけませんでした。(…)アメリカから成田に到着したばかりの小沢幹事長にもヘリコプターの上から自動車電話につながりました。 

 

岡山空港→被災地上空(ヘリ)

 

 私たちは空からの調査のあと、小池百合子代議士の手配で、伊丹空港から車で神戸市役所に向かうことになっていました。(…)しかしながら、夕方の五時頃でしたが、神戸へと向かう道は大渋滞で、車は前にも進めず、後ろにも戻れないような状態になりました。 

 

被災地上空(ヘリ)→伊丹空港→神戸市役所を目指して車で移動開始→渋滞に捕まる

 

1月17日、現地を調査した私は、その日の夜東京に帰り、党幹部に報告をすると同時に、国土庁を訪れ、現地の様子を報告しました。 

 

渋滞→大阪へ戻る?→東京へ

 

以上、まとめると「大阪→東京→岡山→被災地上空(ヘリ)→伊丹空港→神戸市役所を目指すが渋滞→あきらめて?東京へ」という経路。政治家の行動力とはこういうことか、と素直に関心する。とにかく移動する、動く、というのが、政治家の生存には必須の姿勢なのかもしれない。たぶん単純な移動距離では、1月17日当日に日本国内でもっとも移動した人間だろう。ありがとうございます、と言いたい。

 渋滞に捕まったところまでは書いているが、そこからどうしたのかは明記していない。おそらく尼崎〜西宮近辺で神戸入りをあきらめて伊丹空港へ再び戻り、空路帰京したのだろう。後知恵になるけれど、伊丹に降りてから神戸市役所に向かうというプランはかなり無茶に思える。おそらく東京と大阪の新進党本部が泥縄式に計画を建てざるをえなかったのだろう。

 政府の対応が遅れている間に二階氏は大阪→東京→岡山→ヘリで上空、という華麗な折り返しを決めていたが、さてこのヘリでの視察にどれくらいの意味があったのか、評価は難しい。二階氏および同乗の議員たちは、被災の質や広がり、交通状況などを上空から丁寧に読み取るスキルを持たない。これも後知恵の批判になってしまうけれど、上空から携帯電話で伝えても、テレビ中継以上の情報はもたらせなかったのではないか。とはいえ、テレビ画面を介して観るのと、上空からとはいえとにかく生身で知ることには雲泥の差があるだろう。行かない、という選択肢は無いだろう。

 もしヘリで伊丹空港に帰らず、市役所か県庁近くに着陸し、大阪へ送受信できる無線機と発電機を設置して現地本部を立ち上げたなら、歴史に残る大アクロバットだっただろう。(二階議員には土地鑑が無いし、現実には絶対不可能だけれども)

 

 なお、著者の二階氏はその後小沢一郎とも分離して保守党を立ち上げ、政党消滅の辛酸をなめたのち、自民党に復党。出戻り組であったが勢力を盛り返し、現在は自民党幹事長。

 手記で新進党幹事長として登場する小沢一郎氏は、現在自由党党首。同党の勢力は衆参合わせて6議員。

 ちらっと出てくる小池百合子氏は現在東京都知事で、国政進出の機を伺っている。

 22年前の彼らに現在の立場を教えてあげたら、驚くだろうか。それとも案外驚かないだろうか。