しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片を毎日1000字くらいで書く。

エマ・ワトソンが言ったからみんな話を聞いたんだ。

 エマ・ワトソンが言ったからみんな話を聞いたんだ。男性が持つジェンダー・ステレオタイプが女性を抑圧するだけでなくて結局男性自身をも苦しめている、という話はたぶん40年か50年近く前からフェミニストが言ってきた話なのだけれど、たいていの男はそれに耳を貸してこなかった。エマ・ワトソンが言ったから、キモくて金の無いオッサンも、そうでないオッサンも、ちょっと気になって話を聞いたのだ。エマ・ワトソンがそれを言うことが矛盾していようがそうでなかろうが、「男性らしさにとらわれる必要は無い」と初めて聞いて反論している時点で、何周も周回遅れだったのだ。

 

 そしてたぶん、エマ・ワトソンフェミニズムも、「モテなくてもクヨクヨすんな」みたいな文脈で意識改革を説いているのではない。話はもっと単純で、おまえら男の持ってるジェンダー・ステレオタイプが女性を抑圧してんだよ、いい加減気づけよ、ということなのだ。フェミニズムはずっとずっとずっとそれを言ってきた。いくら言っても耳を貸そうとしないので、「実はそのステレオタイプはあなた自身を苦しめているものでもあるのではないですか?」と、説得の仕方をすこし切り替えてくれているのだ。おまえは加害者なのだと言っても無視されるので、「あなたはあなた自身の被害者でもあるのです」と搦手から説得してくれている、ということ。エマ・ワトソンにそれを言ってもらって初めて左耳の鼓膜の半分くらいが反応するのが、オッサンという存在である。

 

 だから、「キモくて金の無いオッサン」を社会的にどうするか、という話にズレこむ時点で、決定的に取り違えてる。もともとは、女性への抑圧をやめろ、というだけの話なのだ。