しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片を毎日1000字くらいで書く。

下草のアンテナ

 道を歩いているとき、風が吹いてきて、それを顔のおもてで感じる。それと同時に、そばの下草や樹の枝葉が揺れているのを見ると、わたしと同じ風によってそれらが揺れているのだと感じる。わたしがわたしなりに知って感じている風を、草や樹はかれらなりの仕方で知って受け止めている。

 ところが、自分は全く風を感じず歩いているのに、小さな下草の葉がびりびりと震えて揺れていることがある。たぶん、わたしにとっては感じられない微風があるか、あるいは下草の生えている地上十数センチのところだけ流れている風があるのか、いずれかである。つまりいずれにしても、わたしが知らない風を、下草が鋭敏に受け止めている。かれらと私では、風に対するアンテナの感度が異なるのだ。