しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片を毎日1000字くらいで書く。

stomachacheは「胃痛」ではない(?)

 以下は、最近3ヶ月在米していたパートナーから教えてもらった話。外国語学部出身で、英語のよくできる人である。

 

 あるとき胃の不快感に悩まされ、薬局で「stomacacheに効く薬をくれ」と頼んだ。欲しかったのは日本でいう「胃薬」である。しかし出されるのはどう見ても下痢止めの薬ばかりだった。

 自分でよくよく探してみると、日本でいう「胃薬」に相当するものはacid reducerという名で売られていた。

 

 つまり、stomachとは胃ではなく、stomachacheは胃痛ではないらしい。上記の例ではむしろ胃より下の下腹部、よりぴったりとした日本語を探すなら「おなか」に近いらしい。だから「stomacheahceがある」は、日本語の「おなかが痛い」というニュアンスになるので、下痢止めや整腸剤の類を出されたわけである。

 

 辞書をひくと、なるほど「stomachache 胃痛、腹痛」と順に記してある。あくまで胃痛も含む広い概念なのだろうか。「have a stomachache 胃が痛い」という例文もあるが、これは「お腹が痛い」と修正すべきであるように思える。

 ではstomachはどうか。第1の語義は「胃」で、第2に「腹部、腹、下腹」と記されている。ややこしいのは、解剖学的な観点ではstomachは確かに「胃」であるということである。stomach cancerは「胃がん」である。

 つまり医学的部位としての「胃」と、もうすこしぼんやりとした日常用語としての「おなか」の両方のニュアンスがある。しかし、私個人の経験では、stomache=胃とのみ覚えさせられたように思う。日本の英語学習のフィールドでは誤って「胃」の意味のみが強調されているような気がする。

 

 日本語の「胃が痛い」は、「強いストレスにさらされている」「悩み事に苦しめられている」というニュアンスも含まれている。この場合、やはり痛いのは心臓の下からみぞおちの間あたりのキリキリとした痛みであり、トイレにかけこみたくなるという印象ではないだろう。(もちろん、ストレス性の下痢という事態もあるけれど)

 だから、もしかしたら「仕事でこんなトラブルがあってねえ」と話したあとに「胃が痛いよまったく」と表現するつもりで「I have a stomacache.」と付け足したら、逆に混乱を招くかもしれない。


とりあえず以上のように整理したけれど、 stomach(ache)が何をどのように意味しているのか、からだに直結していることばであるだけに、そう単純ではないような気がする。

 

 ちなみに、stomachには他動詞として「胃に収める」「侮辱などを我慢する」という意味もあるという。

「Who could stomach such a insult? だれがこんな侮辱に耐えられようか」

という例文があった。これは日本語の「腹に据えかねる」という表現と微妙に似ているところがあっておもしろい。