土人考

 「土人」が尊称・敬称になる日が来るであろうか。土人を蔑称として使うなら、その人自らは空の人、天の人であろうか。空の人は死ねば土に埋もれぬのであろうか。あるいは霊魂はパケットや電磁波となって土に決して触れぬままであろうか。

 土人を土から引き剥がして得た地は、いったい何であろうか。それは面積であって土ではない。区画であって深みではない。領地であって柔らかさではない。そこに改めて立派な構造物や、美麗な自然環境を植え付けたとして、果たして深く根付くであろうか。その土にもっとも根付いていたものの一つが、「土人」であったのではないか。

 しかし、土から離れて生きることはできない、と宣言してみても、その宣言そのものがもはや土から離れている。多くのものは、もはや土から離れて生きざるをえない。しかしその不安を、「土人」を土から引き剥がすことで解消することはできない。

 土人を自称しえぬことをひとが恥じる日が来るであろうか。