しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

トーチカから出る

街の雰囲気が変わった。お年寄りが多い。ハイキングに行くひとや、お茶や買い物をしているひとたち。これまでできるだけ部屋から出ないようにしていたのかもしれない。見えなくなると、気づかない。じっとじっと縮こまっていた街が、ようやくようやく息を深…

論文執筆ログを付ける

先日、ある論文を書いて投稿した。この論文は10月初旬から取り掛かって、10月末日に終えた。10月7日くらいから、ふと論文の執筆過程の記録を取っておこうと思いたち、Scrapboxに簡単なログを付けるようにした。 すると、だいたい次のような過程をたどってい…

京王線放火傷害事件の動画を観察する

なんでこんなひどいことするんだろう…という慨嘆はひとまず措いて、乗客が撮影した動画が上がっていたので、その動画内部でわかるところに絞って観察・検討してみる。 まず移動中の地下鉄車内の火災であることから、以下の点が容易に想像される。 1)避難者…

あなたの町は安全です

先日、「人と防災未来センター」に神戸市内の小学生が来てくれました。「防災セミナー」と題して、30分ほどのレクチャーをさせていただきました。 これまで兵庫県には緊急事態宣言や蔓延防止措置が発令されていて、こうした校外学習の来館者は少なかったので…

『閃光のハサウェイ』第一印象

・童貞力の高さを感じる。 ・ケネス大佐は良い人っぽいかんじで登場したが後半は悪どい戦術使ったり平気で拷問したりで、自分の中では「キレイなバスク大佐」と認識した。 ・クェスがバギーを降りてシャアの元へ走るのをハサウェイの視点から追うという回想…

乗船不遑。登山難及。

『日本三代実録』巻16に、貞観地震津浪についての短い記述がある。 真っ黒な海が盛り上がって津浪が押し寄せ、内陸の数十百里も海となってしまい、その果てがわからないくらいだった… といった意味らしい。 そのなかに「乗船不遑。登山難及。溺死者千許」と…

村の名誉(北原糸子『磐梯山噴火』)

さて、さきほど紹介した碑文を写し終わって村の屋敷地へ向かう一本道を歩いていると、ちょうど途中で村の人らしい中年婦人に出会った。そこで、私は碑のことを尋ねてみた。すると、ご自身のお祖父さんが山内弁次家でひとり生き残った山内竹次さんで、当時数…

第5回黒田裕子賞を受賞しました。

人と防災未来センター研究部・資料室メンバー(木作尚子・中平遥香・高岡誠子・高原耕平)が取り組んでいた研究プロジェクト…を実施した「人と防災未来センター」が、第5回黒田裕子賞を受賞しました。 いろいろなつながりの中から生まれ育ったプロジェクトで…

あまえび

「甘エビ」という名称は、当の甘エビの立場からすると異様に残忍なものであると思う。 人間「おまえ、甘エビっていう名前なんやで…」 甘エビ「えっ…?」 人間「なんでか知りたいか? 食べたら甘いからや」 甘エビ「ギャァ!!!」 甘エビの持つ多様な存在様…

ラジオ関西「知らないけど知っている~私たちの1.17~」日本民間放送連盟優秀賞

ラジオ関西さんが今年1月17日に放送された番組「知らないけど知っている~私たちの1.17~」が、2021年日本民間放送連盟(ラジオ報道番組)で優秀賞を受賞されました。 震災後うまれの津田アナウンサーと、さらに若い長田高校放送部の生徒さんたちが、95年の…

きょうの「ひとぼう」(がまだすドーム巡回展)

「人と防災未来センター」西館1階で、「雲仙岳災害記念館がまだすドーム」巡回展が実施されています。溶岩流に曝された遺物に目を奪われました。 月並みな表現ですが、噴火災害の強烈さを想像させられます。 それにしてもこの壊れやすい遺物群を全国に運び…

イベントのお知らせ(2021/10/16 ふたば学舎)

10月16日に、神戸市長田区の「ふたば学舎」さんで、神戸の「復興」をめぐる哲学対話の場をひらきます。今年度4回予定しているシリーズの第1回となります。 お申し込みはこちらから>> 10/16復興ダイアローグ参加者募集

結婚の前後で使い始めたサービスとかモノとか

1. Scrapbox 真っ先にこれを挙げる。夫婦でそれぞれアカウントを作り、共用のプロジェクトページを設定して使用している。結婚を決めてから生じたあれこれのタスク(両家への挨拶、役所の手続き、引越……やることが、やることが、多い…!)状況を二人で共有し…

実験記録:血気盛んな男子70名を密室に閉じ込めると何が起きるのか…?!

論文を書くぞーということで過去の文献を漁っているといろいろと面白いものも出てくる。今日はその1件を紹介する。 密閉した地下室に70人の男性を閉じ込めて数時間、何が起きたのか…?!! 煽るのはこれぐらいにして真面目に紹介すると、空襲に備えた防護室…

麻婆豆腐のような世界

数年前に沖縄に行ったとき、地元の戦跡・基地ガイドの方と、国道を走るレンタカーの中で、ニューヨーク同時多発テロ以降、世界は見せかけの秩序さえ失って、ひたすらぐずぐずになったように感じる、と話した。その方も深くうなづいておられた。 9.11以前の世…

雑巾を絞る

日本の公的組織における危機管理の特徴として、危機対応業務の質・量が平時業務より大きく変化しても、平時の組織体制や仕組みを温存したまま、各対応機関の能力の余地を使い尽くすことで、その倍加する業務を捌こうとする点が見出される。要するに各機関・…

「なにものでもなかった」

オリンピックもパラリンピックも全く見ておらず、この車椅子バスケットボールの展開も記事で初めて知った。書き留めておこうと思った。 2000年シドニー大会以来のメダルを逃したことに加え、58点差での大敗。厳しい現実は、日本の選手が悲嘆に暮れることすら…

目的なき受光

眼を最初に手に入れた生物はイソギンチャクの仲間であるらしい。ただし眼と言っても哺乳類のそれのような、眼球が動きピントを合わせる超高機能なものではなく、きわめて単純な光センサーにすぎなかった。可視光線を当てられると反応して周囲の細胞に信号を…

未来の水路

いつも使っている駅が近頃天井からの漏水に悩んでいる。地下駅なので、雨が降ると地下水が浸み出すようだ。 臨時の雨樋 漏水はこの駅の老朽化によるものであろうけれど、そもそも地下鉄は常に溜まる地下水をどうしているのか。検索すると次のような回答があ…

批判と悲しみと自衛

先週のことだったか、どなたかが描いた一枚の説明文付きイラストがSNS等で広く共有された。そのイラスト中に、「誰かを批判しても悲しんでも誰も守ってはくれません。近づいてくるのはコロナだけです。」という一文があった。それを首肯するブログ記事も出さ…

まわりくどき安息

ワクチンを打たれに行った。 半日経ったが副反応がほとんど出ていない。打たれた左肩に少し違和感が残って、多少あたまがぼーっとする程度。そしてちょっと眠たい。 ワクチン接種の前に感染したらいやだなぁとおもっていた。 当初、神戸市から届いた接種券で…

書くこと

コロナウイルスの感染拡大が始まる以前の時期に書いていたものを読み返したり思い返したりしてみると、どことなく軽やかさを帯びているというのか、現実からわずかに浮いたような文章を書くことができていたのだなと気づく。そのころは、今日はすこしばかり…

道鏡代わりの山芋が折れました

日本の古典籍について全く素養が無いのだが、たまたま『古事談』(源顕兼編、伊藤玉美校訂・訳、ちくま学芸文庫)を読み始めた。 あれこれ雅なお話が詰まっているのだと思いこんで読み始めたら、第一話からシモネタで面食らった。 称徳天皇、道鏡の陰なほ不…

Japan Anthropology Workshopで活動が紹介されています

JAWS:Japan Anthrolology Workshopのウェブサイトに、石巻市のフィールドワークの様子を紹介する記事が掲載されました。 東北大学災害科学国際研究所の定池祐季先生、ゲルスタ・ユリア先生、および石巻市に住み着いている在野研究者奥堀亜紀子さんと高原が…

戦史叢書(43)ミッドウェー海戦

このように各種の条件が変化してきたが、わが海軍は依然として邀撃作戦一本槍で進み、ひたすら艦隊決戦に勝つことを目差して精進を続けてきたのである。/この各種条件の変化により、わが海軍が期待している艦隊戦闘が果たして生起するか、その艦隊戦闘で戦…

なんとなく判断が変わる

午前と午後に別々の出張予定が入った。 朝、まず家を出てJRに乗って長田区に移動し、打ち合わせ。そのあと、新神戸駅へそのまま移動する。 午後以降の予定は泊まりになる。荷詰めは済んでいる。だが、家を出るとき「なにか忘れ物をしているな」という直感が…

チェーン・アギ論

久しぶりに逆襲のシャアを観ている。 ところでわたしはトミノ宇宙世紀の各作品のテーマについて、1stは「戦争と生存」、Zは「女と男」、逆襲のシャアは「死と命」として規定できるのではないかと考えている。 この各テーマは後のものが前のものを包摂してい…

死と災害

雨が降っている。これからさらにどれだけ降るのか、降らないのか、大きな災害につながるのか、つながらないのか、わからない。何事にもならなければよいとおもう。 しかし一方で、明日から/来週から/今月にかけて、何らかの気象現象があり、そして何らかの…

熱海では避難者へのメディア接触管理ができているのか

熱海の土砂災害では、安否不明者の家族・知人に対するインタビュー記事が被害規模に比してかなり多いのでは、と感じている。 現在の安否不明者は20名前後。その近親者や知人の絶対数は100名規模になるだろう。報道を拾うと、こうしたひとびとのナマの声がか…

「ワクチンを打つ」

オカン「市長がワクチン打ってる」ってそりゃ市長もワクチン打つやろ…って見たら"医師免許持ってる市長が市職員に"ワクチン打ってた…つよい — 唐辛子 (@mantoogarako) 2021年7月1日 日本語ややこしい。 「うちの父はワクチン打ってきたよ」「ぼくはまだワク…