しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

研究

東北へのチューン

先週、個人的な旅行で宮城県を歩き回って、きょうまた学会で仙台に来ている。きょうの仙台は関西に比べるとかなり涼しい。帰りたくない。先週の旅行と今日の学会ではっきりと自覚したことがある。それは、東北の「被災地」に対して自分のアンテナの周波数の…

絶句

昼間、このエントリを拝読して言葉を失った。 自分自身が授業料減免制度を利用してきたし、後輩たちもおそらく利用しているからだ。 じぶんは大阪大学で院生をしていた5年間、前期課程2年間と後期課程1年目は半額免除、後期課程の2-3年目は全額免除していた…

伊勢湾台風記録映画を観なおしてみる

現代の視点から見ていると、いろいろな発見があっておもしろい。 いくつか挙げてみる。 服もけっこうラフ 名古屋市災害対策本部の記者会見の様子。ロウソクが使われている。 遺体安置所の様子。安置所というか、露天にそのまま並べられている。生存者が家族…

防空と防災

古い国会議事録をネットで漁っていたら面白い表現が出てきたのでメモしておく。 ○林田正治君 只今上程になりました特別都市計畫法案委員會の審議の經過竝に結果に付て御報告申上げます、尚ほ其の詳細は速記録に讓ることに致したいと存じます、本案の委員會は…

けっきょく避難勧告・指示とは何なんだろう

今般の豪雨で、しばしば「避難情報を待たずに自分で判断して避難を」というメッセージが発せられた。しかしそうすると、避難勧告や避難指示とは何なのだろう。 避難勧告の発信が高い可能性で予測されている。その勧告は受信者に避難という行為を促す。ところ…

フィールドノーツを書くのはむずかしい

研究会の発表原稿を書いていて、そのために1-2年前のフィールドノーツを読み返している。フィールドノーツとは現場調査で自分が見聞きしたことをまとめたもので、研究の基礎資料となる。その場で起きていたこと、交わした会話、発見したことなどをノート…

避難勧告・指示は必要か

豪雨シーズンが近づいている。 雨量が増えると、避難準備・避難勧告・避難指示が市町村から市民に向けて発令される。市民はそれに応じて、もしくはそうした警報を待たずに避難することが理想とされている。 第六十条 災害が発生し、又は発生するおそれがある…

柔らかい現実と硬い現実

自然災害と戦災を同列に扱うことができるか否か、ということを先週書いた。このときわたしは、復興という観点では同列視できない部分があるという立場をとった。 しかし、個々人の体験という観点においては、自然災害と戦災は共通する部分があるとおもってい…

戦災と天災

『月刊社会科教育』という小中学校の社会科の先生を対象とした雑誌が、2011年8月号で「”災害の歴史”と人類の叡智」という特集を組んでいる。東日本大震災の直後の時期であり、社会科教育で災害をどのように扱うかがテーマとされている。 その中に、谷和樹氏…

黒田裕子は二人いる

看護業界で著名な「黒田裕子」さんが同姓同名の2名おられると今先輩から教えていただいて衝撃を受けている。 おひとりは、阪神・淡路大震災で災害看護の分野を切り拓いた黒田裕子さん。2014年に亡くなられた。 おひとりは、北里大学看護学部教授の黒田裕子さ…

防災教育に関する研究はどれくらいのペースで増えてきたのか

Ciniiで「防災教育」で検索し、論文の発刊年次ごとに数を出してみた。 ざっくりグラフにするとこんなかんじ。 査読論文も紀要論文も学会発表も分けずにカウントしている。 また、微妙に重複があるはずだが、おおまかなトレンドを知りたいだけなので除去して…

関東大震災に教育界はどう反応したか(平野・大部2017)

東日本大震災の後、やはり防災教育は大切だということで、ちゃんと学校で防災を教えましょうという方針が国で固められた。(文科省内のページ:学校安全<刊行物>:文部科学省に答申や参考書がまとめられている) 防災教育は東日本大震災(2011年)のあと初…

カール・レフラー考

さる伝統ある大学の名誉も実績もある教授が、自分の論文に、存在しない神学者の存在しない論文を「引用」した。ということがバレて、クビになった。本も絶版となった。 研究活動上の不正行為に関する調査結果について|東洋英和女学院大学 いったいこの事件…

穏やかな夜に身を任せるな。

いまの職場に入ってから、東日本大震災の映像を見る機会がすこし増えている。 当たり前だけれど、映像の「キツさ」には独特のものがある。阪神大震災の映像はテレビ局によるものがほとんどで、ある種の「落ち着き」がある。プロのカメラマンが肩にカメラをど…

いま読んでいるもの:金井淑子『倫理学とフェミニズム』(2013)

いつのまにか本棚に入っていた本を読んでいる。一節だけメモする。 倫理学とフェミニズム―ジェンダー、身体、他者をめぐるジレンマ 作者: 金井淑子 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版 発売日: 2013/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 私…

参照したいと思った論文の著書が逮捕されていた

研究計画を新しく立てて、先行文献をざくざく読んでいる。 これはなんだか参考になるようだ、という論文を見つけた。しかも著者は地元のひとだった。迷惑承知で、会いに行ってお話を伺ってみようかとさえ思った。テンションが上がる。 コンスタントに論文を…

科研神社を建てよう

日本全国の研究者が参拝する「科研神社」を設立することをかんがえている。 たぶん菅原道真とかを祀る。 科研神社は、科研費その他競争的資金に応募する研究者や院生をひろく受け入れる。不採択が続いたときのお祓い、採択祈願の祈祷、おみくじの販売等をお…

記憶の丸み: 西川祐子『古都の占領』(2017)

以前お世話になっていた先生に今の自分の研究(災害の記憶に関すること)を話したとき紹介された本を読み始めている。 古都の占領: 生活史からみる京都 1945‐1952 作者: 西川祐子 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2017/08/28 メディア: 単行本 この商品を含…

臨床哲学と「方法」

臨床哲学に固有の方法はあるのかと問われることがある。これはおろそかにできない問いだけれど、これまで自分はうまく答えることができなかった。いま完全な答えを出すのではないけれど、その手がかりを考えてみようとおもう。 なおここで言う臨床哲学は、さ…

90年代カンボジアPTSD調査の失敗(新福尚隆「阪神大震災 私の体験と心のケア」)

被災者の心の問題の調査という点では私がWHO在籍中に経験したカンボジアにおけるPTSDの調査団のことが頭に浮かぶ。1991年以降、カンボジアにおいて外国からの支援が始まるようになったとき、急速に増大した申込みの一つはカンボジアにおけるPTSDの調査、研究…

災禍の定義と「支援」(アンヌ・ブッシィ「フクシマの災害と災禍に対する社会の反応」(2015))

災禍の経験を通して、また、半世紀以上の多岐にわたる研究により、「災禍」は時代とともに様々な定義を与えられるようになった。(…)定義にこだわりすぎるのは無意味で無責任なことに思えるかもしれないが、フクシマの被害者のように、常に支援が必要な被災…

小此木啓吾「フロイト対フェレンツィの流れ」(2000)

小此木啓吾「フロイト対フェレンツィの流れ」『精神分析研究』44(1), 28-36, 2000. ・禁欲規則、分析の隠れ身、中立性、受け身性、医師としての分別を基本とするフロイト的態度。他方、人間的な愛情と温かい交流こそ治療の根本であるとするフェレンツィ的態…

「ポスト震災○○年」が不可視化するもの(稲津秀樹「被災地はどこへ消えたのか? 「ポスト震災20年における震災映画の想像力」2017年)

稲津秀樹「被災地はどこへ消えたのか? 「ポスト震災20年における震災映画の想像力」『新社会学研究』2, 2017, 46-56. つまり、「ポスト震災○○年」という言葉でもって震災の時空間が方向付けられる限り、私たちの想像力に1995年1月17日に現出した被災地のリ…

山澤学「自然災害の記録と社会 『信州浅間山焼記』を事例に」(2016)

山澤学「自然災害の記録と社会 『信州浅間山焼記』を事例に」、伊藤純郎・山澤学編著『破壊と再生の歴史・人類学 自然・災害・戦争の記憶から学ぶ』筑波大学出版会、2016年、27-47頁。 (内容のごく大まかなまとめ) 『信州浅間山焼記』は、天明3年(1783年…

エスノグラフィ研究の落とし穴 (イアン・パーカー(八ツ塚一郎訳)『ラディカル質的心理学』2008年)

この1ヶ月、博論を提出し終えてから、質的研究の方法論に関する本を読み始めている。順序が逆だろうと思われるかもしれないけれど、そういうものらしい。調査を始める前にも何冊か読んだのだけれど、うまく頭に入らなかった。不思議なもので、研究にいったん…

「闘わない社会学」……中村英代『摂食障害の語り 〈回復〉の臨床社会学』新曜社、2011年。

「先行研究を批判し、ほかの専門家と闘い、自己の議論の優位性を主張する。こうした知的ゲームには、学問を押し進めていく力がある。あえてそうしたゲームに乗ることは、研究という営みの作法でもあるから、それ自体を否定しようという気は全くない。けれど…

「関ジャニ」の事件は研究者にとっても他人事ではないとおもった

このエントリを読んだとき、他人事ではないなとおもった。 じぶんは「研究」として、いわゆる「一般のひとびと」にインタビューをすることが多い。とても乱雑な言い方だけれど、この番組でタレントが行ったという「街で歩いているひとを呼び止めて、話を聞こ…

「周知のように」を論文で使うべきか否か

「周知のように」という便利な表現がある。「みなさんもすでによくご存知のように」という意味で、とくに論文では使い勝手が良い。 いま自分が書いている論文で、「周知のように」を使っている段落が一箇所だけあった。これを省くかどうか迷っている。 正確…

大阪大学図書館の収蔵書検索結果が「隣の本」も表示するように

いま偶然見つけたのだけれど、図書館収蔵書の検索結果に「隣の本」という項目が追加されていた。 アーサー・フランク『傷ついた物語の語り手』を読んでいると、T. パーソンズの「病人役割論」を何度も批判している。そこでパーソンズの本を検索した。 すると…

良きフィールドワーカーとは?

ここ数年、兵庫県西宮市の復興住宅に通っている。阪神大震災で家を失ったひとびとのために建てられた公営住宅。とくにこの一年間は博士論文のための正式の調査のために、わりと頻繁に足を運んだ。わたしがやっているのは、いわゆる「フィールドワーク」であ…