しずかなアンテナ

哲学の瓦礫片のための場所。

減災

論文がパブリッシュされていました(「避難と科学」『災害情報』20-1)

気づいていなかったのですが、『災害情報』掲載の査読論文がいつのまにか公開されていました。 高原耕平「避難と科学:偶然性と必然性を織り込む物語的研究の可能性」『災害情報』No. 20-1, pp.183-196, 2022. (当該巻号全体のPDFに飛びます) http://www.j…

そのとき何歳? 災害・年齢相関早見表

大学で講義するとき、受講する大学生が何歳のときに各災害が起きたかわからなくなってくる。たとえば、今年20才の大学2回生だと、東日本大震災のとき9才。 この「当時何歳だったか」という感覚は、災害伝承を考える際にも重要であると思う。 というわけで、…

京王線放火傷害事件の動画を観察する

なんでこんなひどいことするんだろう…という慨嘆はひとまず措いて、乗客が撮影した動画が上がっていたので、その動画内部でわかるところに絞って観察・検討してみる。 まず移動中の地下鉄車内の火災であることから、以下の点が容易に想像される。 1)避難者…

あなたの町は安全です

先日、「人と防災未来センター」に神戸市内の小学生が来てくれました。「防災セミナー」と題して、30分ほどのレクチャーをさせていただきました。 これまで兵庫県には緊急事態宣言や蔓延防止措置が発令されていて、こうした校外学習の来館者は少なかったので…

熱海では避難者へのメディア接触管理ができているのか

熱海の土砂災害では、安否不明者の家族・知人に対するインタビュー記事が被害規模に比してかなり多いのでは、と感じている。 現在の安否不明者は20名前後。その近親者や知人の絶対数は100名規模になるだろう。報道を拾うと、こうしたひとびとのナマの声がか…

ぶっちゃけいま災害起きたらどうなるのか

コロナヤバい。マジでヤバい。高齢者や基礎疾患持ってるひとをすぐ重症病床に送る。さらに変異株がぱこぱこ襲ってくる。若くて基礎疾患無くても重症病床に引きずり込む。対策してても感染する。 ヤバい。ヤバいのでめっちゃ医療関係者がんばってる。 自治体…

論文が公開されました

高原耕平「情報アプローチと生活アプローチ -減災システム社会はどこへ行くのか-」『災害情報』19(1), pp.23-34, 2021. http://www.jasdis.gr.jp/_src/707/19-half.pdf?v=1615204386327 2年前、現在の職場(人と防災未来センター)で災害対応マネジメント…

学会で発表賞をいただきました

先週土曜日の災害情報学会・若手研究発表大会で会長賞をいただきました。 発表題目は以下です。 高原耕平「判断は実在するのか 避難研究の多角化のために」 聴講、コメントいただいた皆様、これまで研究活動を支えてくださった皆様にお礼申し上げます。津波…

兵庫県庁の抜き打ち防災訓練

大震災から2周年目にあたる平成9年1月14日、兵庫県は初めての完全抜き打ちの防災訓練をしました。(中略) この訓練では、訓練の関係者、関係機関には、「1月10日から30日までの間で姫路市内を訓練会場として抜き打ち訓練を実施する」ことだけを事前に伝え、…

江戸時代の被災者生活再建支援法

『武江年表』によると、焼失した町屋に対する下賜金の支給額は間口一間(182センチ)当たり金3両1分と銀6匁8分であった。匁に換算すると、一間あたり169匁3分(約34万円)になる。これだけの額の下賜金の支給は、江戸の復興を大いに後押ししたはずである。 …

逃げないという本能

通勤中山手線でバッグが爆発。。。怖すぎる pic.twitter.com/7EwijyuFsJ — 浦和ちゃん。 (@guchiaka73) 2020年9月16日 一昨日、ツイッターに投稿された動画。 映っている範囲では、乗客が発煙しているバッグから1~2メートルぐらい距離をとって「見守ってい…

江戸時代の「見試し」

「見試し」という方法があることを知った。現代的にいえば、フィードバックを重視した柔軟なエンジニアリング/プロジェクト管理手法、ということになるだろうか。 直接知ったのは、藤垣裕子氏の『専門知と公共性』という書籍から。少し長くなってしまうが、…

大震法の時代

「大規模地震対策特別措置法」という法律がある。大震法と略される。1978年(昭和53年)に成立した法律で、いわゆる「東海地震」の予知を前提としている。観測網が東海地震の前兆現象を捉え、学識者からなる「判定会」が東海地震の危険が迫っていると確認し…

避難所開設での感染を防ぐための事前準備チェックリスト

人と防災未来センター主任研究員の高原耕平です。 このたびセンターの臨時レポートとして、「避難所開設での感染を防ぐための事前準備チェックリスト(簡易版、手引き版)」が公表されました。 感染拡大下で従来型の避難所を立ち上げるとクラスター化する危…

「逃げ遅れたのか、取り残されたのか、逃げる途中だったのか。」

3月11日は沿岸部に大きな被害がありましたが、4月7日の余震で、内陸にも被害がありました。私の自宅では、台所の食器棚が全部倒れました。私は寝室にいて、立っていられる四つん這いになって逃げたのですが、そのあとに寝室のタンスが倒れ、下敷きにならずに…

コメリの災害対策センター広報誌がおもしろい

ホームセンター「コメリ」の「災害対策センター」が年2回広報誌を発行しているのだが、この内容がおもしろい。 http://www.komeri-npo.org/about/history/other/2019/support_1901.html No.23の特集は「滋賀県インタビュー 国内で26年ぶり豚コレラ」。 昨年9…

伊勢湾台風記録映画を観なおしてみる

現代の視点から見ていると、いろいろな発見があっておもしろい。 いくつか挙げてみる。 服もけっこうラフ 名古屋市災害対策本部の記者会見の様子。ロウソクが使われている。 遺体安置所の様子。安置所というか、露天にそのまま並べられている。生存者が家族…

防空と防災

古い国会議事録をネットで漁っていたら面白い表現が出てきたのでメモしておく。 ○林田正治君 只今上程になりました特別都市計畫法案委員會の審議の經過竝に結果に付て御報告申上げます、尚ほ其の詳細は速記録に讓ることに致したいと存じます、本案の委員會は…

けっきょく避難勧告・指示とは何なんだろう

今般の豪雨で、しばしば「避難情報を待たずに自分で判断して避難を」というメッセージが発せられた。しかしそうすると、避難勧告や避難指示とは何なのだろう。 避難勧告の発信が高い可能性で予測されている。その勧告は受信者に避難という行為を促す。ところ…

避難勧告・指示は必要か

豪雨シーズンが近づいている。 雨量が増えると、避難準備・避難勧告・避難指示が市町村から市民に向けて発令される。市民はそれに応じて、もしくはそうした警報を待たずに避難することが理想とされている。 第六十条 災害が発生し、又は発生するおそれがある…

2016年に書いたもの

2016年に書いたもの、学会で発表したことをまとめておくことにする。 (厳密には「2015年度」に含まれるものや、2016年内にpublishされなかったものも含まれるけれど) その1 リフトンの修士論文 「R. J. リフトンのサバイバー研究における「変容」思想につ…

大学校舎の災害避難訓練がけっこう無意味っぽかった(らしい)

きのう研究室にゆくと、いまちょうど避難訓練が終わったところ、と教えられた。 文学研究科が入っている校舎(法学研究科、経済学研究科も同居)の避難訓練だったらしい。 避難訓練の手順を聞くと、かなり無意味な…というのは言い過ぎかもしれないけれど、さ…

石巻専修大学のこと

災害復興学会という学会の大会に来た。 初めての参加だったけれども、なんだか歓迎してもらったかんじで、素直に嬉しかった。 懇親会で、会場となった石巻専修大学の前学長という方にお話を聞いた。 石巻専修大学では、2011年の震災で6名の学生を失った、と…